痛みの原因の解明には、末梢神経がどのように形成・維持されているのか知る必要がある
国立成育医療研究センターは1月26日、末梢神経の成熟過程において神経組織の形態変化を調節する中核分子であるサイトヘジン2が、腰や手足の痛みを感じる神経(末梢神経)をつくる過程に関与することを明らかにし、その分子が制御される仕組みを解明したと発表した。この研究は、同センター研究所 薬剤治療研究部の宮本幸上級研究員らのグループによるもの。研究成果は、「Science Signaling」にオンライン掲載されている。
画像はリリースより
慢性的な腰や手足の痛みの根本原因は不明である場合が多く、対症療法として、痛み止めの処方が主流となっている。このような末梢神経の痛みは、神経組織の破綻が慢性化するためであると考えられている。「痛みを伝える神経システムがどのように形成され、どのように維持されているのか」を解明することは、痛みの根本原因を明らかにすることに強く関連している。
サイトヘジン2はリン酸化により活性化し、神経組織の形態変化を調節
研究グループは今回、末梢神経系に発現している遺伝子群をゲノムワイドに探索。その結果、サイトヘジン2が多く存在することを明らかにした。このサイトヘジン2は、末梢神経の成熟過程において神経組織の形態変化を調節する中核分子だったという。
また、サイトヘジン2はリン酸化されると活性化されるが、PTP4A1という脱リン酸化酵素によってリン酸基が外れ、不活性化されることが明らかになった。一方で、SH2B1と呼ばれるアダプタータンパク質によってリン酸基が保護されることで、サイトヘジン2の活性化が維持され、末梢神経組織の形態変化が円滑に進むことが判明した。
サイトヘジン2が末梢神経系の痛みの治療における新たな標的分子となる可能性
今回の研究成果により、サイトヘジン2が末梢神経系に発現し、神経構造を構築する過程において中心的な役割を果たすこと、また、サイトヘジン2が末梢神経系の痛みの治療において新たな標的分子となる可能性が明らかになった。
末梢神経系の構築に関わる中核分子が明らかにされたことで、神経システムの破綻が慢性化した場合も、それを再構築できる可能性が示された。今後、これらの知見に基づいた痛みの根治療法が確立されることが強く期待される、と研究グループは述べている。
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・国立成育医療研究センター プレスリリース