シロスタゾールなど血小板薬併用療法の効果検討「CSPS.com試験」サブ解析
国立循環器病研究センターは1月27日、無作為化比較試験Cilostazol Stroke Prevention Study for Antiplatelet Combination(CSPS.com)サブ解析として、シロスタゾールを含めた抗血小板薬併用療法の至適開始時期を検討したと発表した。この研究は、同センターの山口武典名誉総長(研究代表者)、豊田一則副院長、東京都済生会中央病院、国際医療福祉大学、日本医科大学などの研究グループによるもの。研究成果は、「Neurology」オンライン版に掲載されている。
画像はリリースより
非心原性脳梗塞の再発予防に抗血小板薬が不可欠だが、出血性合併症が課題だ。シロスタゾールは、その多面的作用で「出血を起こしにくい抗血小板薬」として知られる。国内で実施のCSPS試験、CSPS2試験によって、高い脳梗塞再発予防効果と安全性が示されている。
CSPS.com試験は、シロスタゾールを含めた血小板薬併用療法の効果を検討した無作為化非盲検並行群間比較試験。対象は、発症後8~180日の非心原性脳梗塞で、頚部または頭蓋内の動脈に50%以上の狭窄を認めるか、2つ以上の動脈硬化危険因子を有するかの条件を満たす1,879例。アスピリンあるいはクロピドグレルを用いた抗血小板薬単剤服用群、2剤どちらかにシロスタゾールを併用する群に無作為に割り振った。
試験の結果、脳梗塞再発は併用群で発現率が約半分に有意に抑えられ、全ての脳卒中なども同様に併用群が有意に発現を抑えた。出血性合併症については、2群間で有意差を認めなかった。同試験によって、ハイリスク非心原性脳梗塞患者にアスピリンまたはクロピドグレルに加えてシロスタゾールを長期併用することで、単剤治療に比べて脳梗塞再発予防効果が向上し、かつ安全性についても差がないことが示された。この主解析結果は、2019年にLancet Neurology誌に掲載されている。
脳梗塞発症3週目以降で、併用療法開始の治療効果を確認
今回のサブ研究では、シロスタゾールを含めた併用療法を、いつから始めるのが適切かを検討。CSPS.com登録患者を、発症後8~14日まで(498例)、15~28日まで(467例)、29~180日まで(914例)に登録した3群に分け、併用群と単剤群の効果を比較した。
その結果、15~28日群(調整ハザード比0.34,95%信頼区間0.12-0.95)と29~180日群(0.27,0.12-0.63)で併用群が有意に主要評価項目である脳梗塞再発を抑止。それに対し、8~14日群では、併用群と単剤群とで有意差を認めなかった(1.02,0.51-2.04)。
安全性評価項目の大出血発現率は、発症日ごとの3群のいずれも、併用群と単剤群との有意差を認めなかった。以上の結果より、脳梗塞を発症して3週目以降にシロスタゾールを含めた併用療法を始めることの治療効果が示された。
脳梗塞発症後早期にアスピリンとクロピドグレル併用治療、3~4週目にシロスタゾールなど併用に切り替えを示唆
非心原性脳梗塞の発症後早期から亜急性期(おおむね1か月以内)にかけては、主にアスピリンとクロピドグレルを用いた2剤併用が勧められている。しかし、長期の抗血小板薬併用は、CSPS.comが発表されるまで、有効な治療が示されていなかった。今回のサブ研究結果から、脳梗塞発症後早期にアスピリンとクロピドグレルの併用で治療を始め、3~4週目にシロスタゾールを含めた併用に切り替えることで、脳梗塞急性期から慢性期の切れ目ない抗血小板薬併用療法を続けることが出来ることが示唆された、と研究グループは述べている。
なお、CSPS.comでは、他にもシロスタゾール・クロピドグレル併用に着目したサブ解析や頭蓋内動脈狭窄患者におけるサブ解析などの発表が相次ぎ、日本人や東アジア人に適した脳梗塞再発予防効果の新知見を多く発信している。
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・国立循環器病研究センター プレスリリース