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慢性心不全の患者・家族調査、患者の9割以上が「生活満足度低下」-ベーリンガーほか

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2022年01月28日 AM11:30

慢性心不全で薬剤療法を受けている患者203人、家族104人を調査

日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社と日本イーライリリー株式会社は1月27日、慢性心不全の薬物療法を受けている患者203人、および家族104人を対象に、生活の満足度や実態などについて調査を実施し、その結果を発表した。調査は、慢性心不全患者および家族の生活に対する慢性心不全の影響・実態の調べる目的で、2021年6月にインターネットを使って行われた。


画像はリリースより

慢性心不全と診断後の変化に対し、患者と家族の両者が辛さやストレスを実感

「慢性心不全と診断されてから自身に起きたこと/対応したこと」に関する設問に対し、患者の回答は「スポーツをしなくなった」36%、「会社を退職した・仕事を辞めた」23%、「仕事内容を変えた(転職を含む)」16%だった。また、これらの変化に対し、各変化による程度の差はあるものの、患者は辛さやストレスを感じていることがわかった。

「慢性心不全患者の介護・サポートをするようになってから自身に起きたこと/対応したこと」に関する設問に対し、家族の回答は「旅行をしなくなった」32%、「友人との付き合いを減らした・減った」31%だった。これらの変化に対して家族も辛さやストレスを感じていることもわかった。

治療中に患者が感じるニーズ、「相談相手がほしい」「「早期発見につながる啓発活動」など

また、生活満足度を発症前と比較してもらう設問から、92%の患者に満足度の低下が確認された。体力の衰えの実感や金銭的な負担や心配が募るにつれ、低い満足度となっていることもわかった。診断後に起きた日常生活の変化に感じている辛さやストレスが、患者の生活満足度に影響を及ぼしていることが示唆された。

さらに、「慢性心不全の治療中に感じるニーズ」に関する設問に対し、患者の回答は「病気や治療について気軽に相談できる人がほしい」27%、「早期発見につながる啓発活動をしてほしい」19%という結果だった。

早期の治療介入と適切な指導により生活の制限を軽減できる可能性も

心不全は、世界中で6,000万人以上が罹患しており、高齢化が進むにつれて患者数が増加すると予測されている。心臓が体中に十分な血液を送り出すことができず、酸素を含んだ血液の需要を満たせない進行性の状態であり、死亡に至る場合もある。酸素を含んだ血液の需要を満たすために、血液量を増やさなければならず、その結果、肺および末梢組織に液体貯留(うっ血)が生じる。多くの心不全患者には、息切れや疲労感が現れ、生活の質()が大きく低下する。また、心不全患者さんは腎機能障害を有することが多く、これも予後に悪影響を及ぼすとされている。

調査結果について、日本心不全学会理事であり、かわぐち心臓呼吸器病院副院長循環器内科部長内科統括部長の佐藤直樹先生は次のように述べている。「今回の調査結果から、患者とその家族に、慢性心不全診断後に社会との関わりを減じてしまうような日常生活の変化が起きており、慢性心不全と共に生活をしていくことは患者、家族双方にとって負担となっていることが改めて確認された。早期発見につながる啓発活動により、早期の治療介入と適切な指導を行うことで心不全の進行を遅らせ、患者の生活の制限を軽減することができる可能性が考えられる」

両社は、これらの結果を受け、日本の心不全診断後の患者と家族の生活満足度向上や、今回の調査で明らかとなった期待するニーズへの対応を含め、今後もさまざまな活動を行っていくとしている。

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