好酸球が病態形成に重要なEGPA、cfDNAがEETsのマーカーになるか?
兵庫医科大学は1月25日、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)の病態形成メカニズムを明らかにしたと発表した。この研究は、同大糖尿病内分泌・免疫内科学の橋本哲平講師ら、秋田大学大学院医学研究科総合診療・検査診断学講座、相模原病院、京都近衛リハビリテーション病院、南京都病院、旭川医科大学皮膚科学講座、神戸大学保健学研究科の研究グループによるもの。研究成果は、「Frontiers in Immunology」に掲載されている。
好中球細胞質抗体(ANCA)関連血管炎は、小型血管が侵される壊死性血管炎であり、EGPA、多発血管炎性肉芽腫症(GPA)、顕微鏡的多発血管炎(MPA)に分類される。これまでANCA産生の機序として好中球細胞外トラップ(NETs)の異常が報告されてきた。活性化された好中球はNETsを形成し、DNAとともに細胞外に放出されたミエロペルオキシダーゼ(MPO)が自己抗原となり、MPO-ANCA産生が誘導され、さらにANCAがNETsを誘導するなど、悪循環が病態を形成している。
一方で、EGPAはGPAやMPAと異なり、ANCAと好中球だけではなく好酸球が病態形成に重要な役割を果たしている。好酸球もまたIL-5やLPSなどの刺激で活性化し、脱顆粒した際に細胞外にDNA(cell-free DNA:cfDNA)を放出し好酸球細胞外トラップ(EETs)を形成する。cfDNAはNETsが関連する疾患のバイオマーカーとして使用されており、EETsにおいても重要なマーカーとなることが推測される。
血中cfDNA濃度はEGPAで有意に上昇、好酸球やD-Dimerと相関も
今回の研究では、EGPA、GPA、MPA患者の治療前後の血清から抽出したcfDNAをリアルタイムPCRで定量測定し、疾患パラメーターとの関連を解析した。血中cfDNA濃度は、EGPAでGPAやMPAより有意に上昇。疾患活動性を反映するとともに、好酸球やD-Dimerとの相関関係も認めた。
また、EGPA患者の皮膚および神経生検で得られた病理組織を用いて、血栓中のEETs/EETosis(EETsによる細胞死)をHE染色、免疫蛍光染色、電子顕微鏡で検討。血管内皮マーカーCD31、EETsマーカーのシトルリン化ヒストンとDNAを免疫染色し、HE染色と比較することで、血管内にEETs/EETosisの存在が示された。
血管内で活性化の好酸球がEETosisを起こし血栓形成促進
次に、末梢血から抽出した好酸球と好中球をPMAで刺激し、EETs/NETsを誘導した後、核外に放出されたDNAにDNaseを添加し、その分解速度を比較した。EETsではNETsと比較してDNaseに対する耐性が強く、DNA分解に長い時間を要したという。さらにEETsが血栓形成を促進するかを評価するために、EETosis細胞と蛍光標識血小板を含む血漿をインキュベートし、付着血小板を定量し、EETosis細胞と血小板を走査型電子顕微鏡でも観察。その結果、多数の血小板がEETosis細胞に付着し、EETsがDNaseによって除去されると付着血小板は減少した。
これらの結果からEGPAでは血管内で活性化された好酸球がEETosisを起こして血栓形成を促進していること、そのバイオマーカーとしてcfDNAが有用であることが明らかになったとしている。
EGPA、好酸球標的の治療が重要であることを示唆
EGPAでは、好酸球の活性化と細胞死、これに関連した血栓形成が重要であることが証明された。これは同疾患において、好酸球を標的とした治療が重要であることを示唆しているという。今後、好酸球の活性化を抑制する新たな治療開発を含め、難治性病態を抑制することが課題となる、と研究グループは述べている。
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・兵庫医科大学 研究成果