240万単位単回筋注でペニシリンの血中目標濃度を少なくても1週間維持
ファイザー株式会社は1月26日、持続性ペニシリン製剤「ステルイズ(R)水性懸濁筋注60万単位シリンジ/240万単位シリンジ」(一般名:ベンジルペニシリンベンザチン水和物)を発売した。適応菌種は梅毒トレポネーマ、適応症は神経梅毒を除く梅毒。用法・用量は、病状と年齢により異なるが、成人および13歳以上の小児の早期梅毒では、「通常、ベンジルペニシリンとして240万単位を単回、筋肉内に注射する」とされている。
梅毒トレポネーマの殺菌には、7~10日間、血漿中ペニシリン濃度を0.018µg/mL以上保つ必要があることが一般的に知られている。PCGベンザチンの溶解性は低く、筋注部位から緩徐に放出され、PCGに加水分解されて吸収されるため、血中濃度が長時間持続する。このため、PCGベンザチンは240万単位を1回筋注することで、少なくとも1週間は有効な血中濃度を維持することができるという。
目標有効濃度以上を維持した期間の中央値は約23日
梅毒は進行性の性感染症の一つで、日本では2010年以降感染者数が増加傾向を示している。同剤は、早期梅毒に対して単回投与で治療効果が期待できること、アドヒアランスの低下による治療失敗は考え難いこと、これまで海外では梅毒患者の治療に貢献してきた実績があること、また、これまで耐性菌の報告がないこと等をふまえ、「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬」として関連団体(日本感染症教育研究会)から要望があった。「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」での検討結果を受けて、厚生労働省から開発要請があった。
これらの経緯から、日本での承認申請におけるデータパッケージは、以下の方針に基づき構築された。成人については、「日本人健康成人を対象とした第Ⅰ相試験を実施し、海外の用法および用量で単回投与した際の有効血中濃度の維持、安全性および忍容性を確認する。公表論文や海外添付文書等から、日本人における本剤の有効性および安全性を考察する」。小児については、「上記の第1相試験の結果および海外での小児データ等を用いて、日本人小児での用法および用量を説明する」。
要請により実施した日本人における第1相試験の結果と公表論文や海外添付文書等に基づき製造販売承認申請を行い、2021年9月に承認された。日本人健康成人に単回投与する試験(B8441001試験)において、血漿中濃度が目標有効濃度(0.018µg/mL)以上を維持した期間の中央値は約23日だった。
第一選択のペニシリン系抗菌内服薬と同等の位置づけになると期待
国内において、長い間、ペニシリン系抗菌薬の内服製剤が梅毒治療の標準薬とされてきた。同剤は、神経梅毒を除く活動性梅毒の治療薬として、従来の第一選択薬と同等の位置づけになると期待される。
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・ファイザー株式会社 プレスリリース