「COVIREGI-JP」登録の18歳未満入院患者1,299人を解析
国立成育医療研究センターは1月25日、新型コロナウイルスデルタ株流行期における小児新型コロナウイルス感染症による入院例の疫学的・臨床的な特徴を、デルタ株が流行する以前と比較検討し、その実態を明らかにしたと発表した。この研究は、同センター感染症科の庄司健介医長、国立国際医療研究センターの秋山尚之主任研究員らの研究グループによるもの。研究成果は「Journal of Infection and Chemotherapy」に掲載されている。
画像はリリースより
新型コロナウイルス感染症の第5波では、感染力が強いとされるデルタ株の流行もあり、小児患者数も増加した。しかし、小児患者の臨床的特徴や重症度がデルタ株の流行により変化があったのか、どのような小児患者が重症化していたのかなどの情報は限られ、解明が求められていた。
研究対象は、2020年10月~2021年5月(デルタ株以前)と2021年8月~10月(デルタ株流行期)の間に「COVID-19 Registry Japan (COVIREGI-JP)」に登録された18歳未満の新型コロナウイルス感染症患者。患者の背景や臨床経過、予後などのデータを集計・分析した。デルタ株以前は950人、デルタ株流行期は349人、合計1,299人であった。
デルタ株以前に比べ、デルタ株流行期では入院患者年齢低く、ICU入院率高い
入院患者の年齢中央値は、デルタ株以前が10歳、デルタ株流行期が7歳と、デルタ株流行期の方が若年化している傾向にあった。入院患者に占める無症状患者の割合は、デルタ株以前が25.8%、デルタ株流行期が10.3%と、デルタ株流行期はより症状のある患者が多く入院していたことがわかった。何らかの基礎疾患のある患者は、デルタ株以前が7.4%、デルタ株流行期が12.6%だった。
また、ICUに入院した患者数と割合は、デルタ株以前1人(0.1%)、デルタ株流行期5人(1.4%)と、いずれもデルタ株流行期で高かったことがわかった。症状があった患者に限って同様の解析を行ったところ、デルタ株以前1人(0.1%)、デルタ株流行期5人(1.6%)と患者全体での解析とほぼ同様の結果だった。ICUに入院した患者のうち、半数(6人中3人)は基礎疾患(喘息または肥満)のある患者だった。
一方で、COVIREGI-JPに登録された患者の中にはデルタ株流行期を含め、人工呼吸管理を要す患者、死亡した患者は認めなかった。
小児の入院適応やワクチン接種の対象を検討する上での基礎データとなることに期待
今回の研究により、日本の小児新型コロナウイルス感染症の入院症例の実態がデルタ株流行の前後でどのように変化したのかが明らかになった。今後、小児の入院適応やワクチン接種の対象などを考えていく上で、研究結果がその基礎データとして利用されることが期待される。
その時に流行している株の違いや、その時の社会情勢、医療環境により新型コロナウイルス感染症入院例の疫学的、臨床的特徴が異なる可能性があるため、オミクロン株の与える影響など、引き続き検討していく必要があると考えられる。
「研究結果からは、小児の新型コロナウイルス感染症患者の絶対数が増えると、集中治療を要するような小児患者も増えることが予想され、オミクロン株が流行している現在においても、小児患者について注意深く診ていくことが求められる」と、研究グループは述べている。
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・国立成育医療研究センター プレスリリース