唾液腺のマクロファージの役割は?
東北大学は1月21日、実験動物の唾液腺のマクロファージを解析し、唾液腺の健康維持に働く2種類のマクロファージを発見したと発表した。この研究は、同大大学院歯学研究科口腔分子制御学分野の菅原俊二教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Scientific Reports」オンライン速報版に掲載されている。
画像はリリースより
唾液は口の持つ本来の働きを十分に機能させ、健康を維持する上で非常に重要な分泌液である。唾液腺はこの唾液を産生・分泌する重要な臓器。唾液腺の機能が低下すると、唾液の分泌が低下し「口腔乾燥症(ドライマウス)」などを引き起こす。唾液腺にはリンパ球や白血球などの免疫細胞が存在する。マクロファージは、死細胞や感染微生物などを取り込む(貪食する)能力を持ち、大食細胞ともよばれる免疫細胞の一種だ。最近になって、マクロファージは感染防御ばかりでなく、組織・臓器の発生や正常な機能の維持、組織の修復や炎症のコントロールなどに重要な役割を果たしていることが明らかになりつつある。
胎生期の前駆細胞由来と生後の骨髄細胞由来の2種類を発見
研究では、実験動物(マウス)の唾液腺のマクロファージを解析し、細胞表面のCD11c発現の違いから、CD11c陽性およびCD11c陰性の2種類の唾液腺マクロファージを発見した。胎仔期から新生仔期にかけてはCD11c陰性マクロファージが大部分を占めていたのに対し、離乳期以降はCD11c陽性マクロファージが大部分を占め、成長に伴い唾液腺マクロファージの構成が劇的に変化することが明らかになった。
また、CD11c陰性マクロファージは、胎仔の卵黄嚢や肝臓に存在する胎生期の前駆細胞に由来するのに対し、CD11c陽性マクロファージは骨髄細胞に由来し、2種類の唾液腺マクロファージはその由来が異なることが示された。いずれのマクロファージもコロニー刺激因子-1(CSF-1)の受容体を発現していて、CSF-1に依存して増殖することも示された。
他の臓器中のマクロファージとは異なる特徴
さらに、遺伝子発現の網羅的解析などの結果から、唾液腺マクロファージは、脾臓や肺など他の臓器中のマクロファージとは異なり、低い貪食能と特徴的な遺伝子発現パターンを示すこと、CD11c陰性マクロファージは免疫を抑制的に制御する性質を持つことなどが示された。
今回の研究は、唾液腺には発生段階に応じて2種類の異なるマクロファージが存在し、唾液腺の発生と機能維持に重要な働きをしていることを示すものだ。「これらの結果は、唾液腺疾患の発症機序の解明や新たな治療法の開発に大きく貢献することが期待される」と、研究グループは述べている。
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