15年10月から5年間で機構に報告された医療事故報告のうち、「薬剤に関連した死亡事例および薬剤に関連した死亡であることが否定できない事例」は計273件だった。
このうち、確認不足による誤投与で死亡に至ったと考えられる事例として、ハイリスク薬関連29件、ハイリスク薬以外でも警鐘が必要な事例7件の計36件を分析した。
これら36件では、処方時や投与準備・実施時のミスなどにより、禁忌薬の投与、過少・過量投与、濃度が高い薬剤の投与、重複投与、内服中断などが行われ、結果的に患者の死亡につながってしまった。
具体例を見ると、70代の肝性脳症患者に同治療剤「リフキシマ」が処方されたものの、塞栓治療剤「リクシアナ」と取り違えて調剤された後、看護師が薬袋の薬剤名と薬剤を照合することなく内服薬が投与され、消化管出血による出血性ショックの疑いで死亡。
糖尿病患者に対するインスリン製剤投与関連では、4件の死亡事例が報告された。60代患者にインスリン専用注射器を使用せずに10mL注射器を用いて適量の100倍投与となり、低血糖を契機とする肝不全等で死亡と判断された。
これらの死亡事例を踏まえ、機構は再発防止に向けた対策を提言した。
死亡事例のうち35件で何らかの確認が不十分で誤投与に至ったとして、処方から投与までの工程で確認のタイミングを明確にし、患者への薬剤の適応を判断する「妥当性チェック」、薬剤名や患者名を突き合わせる「照合型チェック」が必要とした。
不慣れな薬剤の取り扱いも誤投与につながっているとして、ハイリスク薬の使用に必要な知識の習得、ハイリスク薬の投与直後に変化がなくてもすぐに患者の監視を始め、薬物中毒の相談窓口や専門医に相談することも求めた。
インスリンバイアル製剤からインスリンを量り取る際は必ず専用注射器を使用するほか、インスリンを指示する場合は単位で行い、専用注射器で量り取れない場合は指示間違いを疑い、指示した医師に確認すべきとした。
学会や製薬企業に対しては、禁忌薬が患者情報と連動して照合可能などの機能を持ったオーダリングシステムについて、国、学会、業界の中央機関が一括してリスク対応するよう提案。
また、薬品ラベルに携帯情報端末をかざすと表示や音声で注意喚起する機能といったICTを活用すること、注意喚起するロゴを薬剤に装着するなどの努力を求めた。