■ダブルメンター制導入
京都大学は、2022年度から大学院薬学研究科に日本の薬学系大学院では初となる5年一貫制博士課程を設置する。名称は「創発医薬科学専攻」で定員は14人。5年一貫で長期視点に基づく連続性のある教育を行えるほか、複数の指導者が教育するダブルメンター制を導入。複数の専門領域を融合できる研究者を育成し、前人未踏の薬学新領域の開拓を推進する考えだ。
2022年度の大学院薬学研究科の改組で、2007年度に開設した医薬創成情報科学専攻を発展的に解消し、5年一貫制の創発医薬科学専攻を新設する。6年制の薬学科卒業生が進学する4年制博士課程の薬学専攻、4年制の薬科学科や他学部卒業生が進学する薬科学専攻は、それぞれ定員を調整して存続する。
京都大学は18年度に薬学部を改組した。6年制の薬学科の定員を30人から15人に減らす一方、4年制の薬科学科の定員を50人から65人に増やした。入学者の募集は薬科学科と薬学科を合わせた学部単位での両学科一括とし、4年次進級時に学科の振り分けを行う方法に改めた。
薬学部の改組を踏まえて大学院の改組を検討。18年度に入学した学生の学年進行に間に合うように、2022年度から大学院の改組に踏み切ることになった。
薬科学専攻など従来の修士2年、博士後期課程3年の課程では、薬学を構成する各専門分野を掘り下げ、薬学基盤を持続、発展させる人材の育成に取り組んできた。一方、創発医薬科学専攻では、未踏薬学領域の開拓とそれを担う博士人材を育成することを目指す。
前人未踏の薬学新領域を開拓するには、複数の領域の融合がキーワードになるという。創発医薬科学専攻には、異なる領域の複数の教員からそれぞれ指導を受けることができるダブルメンター制を導入する。
従来のように、一つの専門領域を極める研究者だけでなく、二つ以上複数の専門領域を持ち、融合できる研究者を育成していく考えだ。
京都大学薬学研究科長・薬学部長の加藤博章教授は「薬学は成熟した領域になっており、新たな展開を図らなければならない。社会からはイノベーションが求められている。その期待に応えるには、まだ足を踏み入れていない未踏領域での研究展開が必要と考えた」と語る。
5年一貫制には、長期視点に基づく連続性のある教育を行えるほか、修士論文等の短期的成果を求めない自由度の高い研究に取り組める利点もある。
欧米のトップの大学院の多くは5年一貫制を導入している。その仕組みを参考に5年一貫のプログラムを構築した。
最初の1~2年で実験技術のほか、研究テーマの選定方法や研究費獲得の書類作成法など研究に必要な基礎を学び、研究の計画力や構想力を身に付ける。並行して予備的な実験を行いながら2年次が終わるまでに、3年次以降の博士学位研究の計画を立案する。研究室外部の委員で構成される学位研究支援評価委員会で研究計画を説明し、そこでの諮問に合格することで3年次に進み本格的な研究に取り組む。
同じ5年間でも、修士課程2年と博士後期課程3年の大学院に比べてゆとりがある。自分のペースで主体的に研究に取り組めるという。