肉体的な負担の大きい「内視鏡検査」の回数を減らすための検査法が求められていた
東北大学は1月14日、国内外の炎症性腸疾患の診断における抗EPCR抗体検査の有用性を明らかにしたと発表した。この研究は、同大病院消化器内科の角田洋一病院講師および、同リウマチ膠原病内科の白井剛志病院講師、同大大学院医学系研究科消化器病態学分野の正宗淳教授と、米国シーダースサイナイ医療センターのMcGovern医師らとの国際共同研究グループによるもの。研究成果は、「Clinical Gastroenterology and Hepatology」電子版に掲載されている。
画像はリリースより
潰瘍性大腸炎とクローン病などの炎症性腸疾患は、若者を中心に患者数が急増している。慢性的な腹痛や下痢によって日常生活に支障があるほか、進学や就職などの社会生活にも影響がある。いずれも国の指定難病で完治する治療はないが、最近は治療法が急速に進歩し、病態に応じてさまざまな治療薬で症状をコントロールすることも可能になりつつある。
一方で、下痢や腹痛などを示す疾患は炎症性腸疾患以外にも多くあるため、病気を正しく診断し、病状をより正確に把握するため、大腸内視鏡検査が必要となる。しかし、内視鏡検査は肉体的にも負担が大きいため、検査の回数を減らすような検査方法の開発が求められている。
大部分の潰瘍性大腸炎患者で抗EPCR抗体を検出、炎症性腸疾患以外の患者では検出されず
研究グループは今回、炎症性腸疾患の患者や、大腸がんの患者、健常人ボランティアなど、合計300人以上の日本人・米国人の血清サンプルにおける血管内皮細胞プロテインC受容体(EPCR)に対する自己抗体(抗EPCR抗体)を測定。同抗体が大部分の潰瘍性大腸炎の患者で検出される一方、健常人や大腸がんや他の腸炎など炎症性腸疾患ではない患者では検出されないことを発見した。
これにより、同抗体が炎症性腸疾患の診断、特に潰瘍性大腸炎を診断するために非常に有用な検査であることが示された。
内視鏡検査無しで潰瘍性大腸炎の炎症状態を評価できる可能性
今回の研究で、抗EPCR抗体が炎症性腸疾患の患者でどのように変化しているかが明らかにされたことで、同抗体を測定することで潰瘍性大腸炎の診断ができる可能性が示された。さらに、内視鏡による検査無しで潰瘍性大腸炎の炎症の状態が評価できる可能性が示された。
「今後は、この検査が将来の難治化の予測や、患者ごとに適切な治療薬を選択する個別化医療を実現ために、重要な検査となる可能性も期待される」と、研究グループは述べている。
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