国のワクチン開発・生産体制強化戦略では、ワクチン等の確保・研究開発が必要な感染症を特定する必要があるほか、今後のパンデミックに備えるべき重点感染症を決定した上で、ワクチンや治療薬等の企業開発を支援することなどを明記している。
同戦略を踏まえ、既知の感染症と未知の新興感染症の流行に備えるため、検討会ではそれに対応した医薬品等(MCM)の確保、対象となる感染症の指定などについて議論する。
厚労省はMCMについて、公衆衛生危機管理上、危機への医療的な対抗手段となる重要性の高い医薬品等と定義し、不活化やmRNA等のワクチン、微生物薬等の治療薬、診断技術などを例に挙げている。
初会合では、重点感染症の考え方、どのような「重点感染症リスト」を作成するかを議題とした。厚労省は、公衆衛生上の危機管理が重要となる感染症は予見可能性が乏しく、治療薬等の臨床研究を進めることは困難として、流行頻度が比較的高くて国内外で一定のインパクトがある感染症をモデルとした応用可能な基盤技術の開発を考慮に入れるべきと提案。リストについては、MCMの確保と研究開発を行う上での優先順位を設定する必要性があるとした。
岩本愛吉構成員(日本医療研究開発機構研究開発統括推進室長)は、「呼吸器系の感染症で変異が多いものには迅速に対応すべきで、インフルエンザとコロナウイルスは最初の国産防備として対象にすべき」との考えを示した。
大曲貴夫構成員(国立国際医療研究センター国際感染症センター長)は、「転用可能な新規基盤技術を貪欲に開発することが大事だ。緊急時だからこそ行うべき開発のトライアルに関する方法を作ることが重要」とした。
柴田大朗構成員(国立がん研究センター研究支援センター生物統計部長)は、「開発と市販後のファーマコビジランスが乖離している。バイオテロに対する医薬品評価をどう行っているかなど、平時から多様な評価方法を吸収しておくべき」と述べた。
舘田一博構成員(東邦大学教授)は、「日本は感染症の危機管理対策が弱く、欧米に倣う必要がある」と指摘した上で、米国の取り組みを引き合いに「炭疽菌に対する治療薬開発が行われており、継続的に投資している。日本の独自性を組み込みつつ、学ぶべきものは学ぶべき」とした。
構成員からの意見を踏まえ、厚労省は27日予定の次回会合で重点感染症に関する考え方の案を示す方針。