患者10人の入院中・退院後の複数時点における血清試料81検体を解析
広島大学は1月7日、医療機関において入院治療を受けた新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者10人(軽症5人、中等症5人)の入院中・退院後の複数時点における血清試料(合計81検体)を解析したことを発表した。この研究は、同大大学院医系科学研究科の坂口剛正教授、田中純子教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Medical Virology」に掲載されている。
画像はリリースより
咽頭ぬぐい液や唾液から検出される新型コロナウイルスの動態についてはこれまでに複数の報告がなされているが、血液から検出されるウイルスの動態およびその感染性については十分明らかになっていない。
研究グループは、医療機関において入院治療を受けたCOVID-19患者10人(軽症5人、中等症5人、年齢中央値:60歳、範囲:25歳~76歳、入院期間中央値:13日間、範囲9~25日、経過観察期間中央値35日間、範囲20~66日)の入院中・退院後の複数時点における血清試料(合計81検体、検体採取期間:2020年7~12月)を解析した。
経過観察期間中の培養細胞によるウイルス分離検査ではすべて分離陰性
その結果、全例の入院時血清からウイルスが検出された。軽症例の入院時血清から検出されたウイルス量は10.9-1,299.1copies/mlであり、5例中4例は経過観察中に検出感度以下まで低下した。中等症例の入院時血清から検出されたウイルス量は19.5-231.0copies/mlであり、経過観察期間中ウイルスは検出され続けた。
経過観察期間中、ウイルス量が最も多かった時点の検体について、培養細胞によるウイルス分離検査を行い、感染性の有無について評価した。その結果、すべて分離陰性であり、検出された血中ウイルスに感染力はないものと考えられた。
また、すべての患者において、発症後1週間ほどで抗体が増加し始めた。軽症例よりも中等症例において中和活性がやや高い傾向があったこともわかったという。
「研究結果は、従来株に感染した患者の血清試料を解析した結果であるが、今後はデルタ株やオミクロン株などあらたな変異株に感染した患者の血中ウイルス量やその感染性についても評価を行っていく予定」と、研究グループは述べている。
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・広島大学 研究成果