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オミクロン株症例の積極的疫学調査(第1報):感染性持続期間の検討-感染研ほか

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2022年01月06日 AM11:15

呼吸器検体中ウイルスRNA量の推移と感染性ウイルス検出期間の暫定報告

(感染研)は1月5日、「SARS-CoV-2 B.1.1.529系統()感染による新型コロナウイルス感染症の積極的疫学調査(第1報):感染性持続期間の検討」と題した速報を発表した。この報告は、感染研と国立国際医療研究センターの国際感染症センターが、国立国際医療研究センターと、りんくう総合医療センターからの情報を基にまとめたもの。なお、同報告は迅速な情報共有を目的としたものであり、内容や見解は知見の更新によって変わる可能性がある。


画像は感染研サイトより

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染による新型コロナウイルス感染症()においては、B.1.1.529系統の変異株(オミクロン株)が、2021年11月末以降、日本を含む世界各地から報告され、感染・伝播性や抗原性の変化が懸念されている。国内においては、新型コロナウイルス感染症患者は感染症法または検疫法に基づいて入院措置等が行われる。オミクロン株についての知見が不十分であるため、令和4年1月4日現在、オミクロン株による新型コロナウイルス感染症患者(オミクロン株症例)については、オミクロン株以外による新型コロナウイルス感染症患者(非オミクロン株症例)と異なる退院基準が設定されており、核酸増幅法または抗原定量検査による2回連続の陰性確認が必要とされている。しかし、現在の退院基準では入院期間が長期化し、患者および医療機関等の負担となる可能性があることから、オミクロン株症例のウイルス排出期間等について明らかにする必要がある。

感染研では、関係医療機関・自治体の協力のもと、感染症法第15条の規定に基づき、オミクロン株症例の積極的疫学調査を行っており、同調査の一環として、感染性持続期間を検討している。今回の報告では、この暫定報告として、国内のオミクロン株症例の呼吸器検体中のウイルスRNA量(Cq値)の推移と感染性ウイルスの検出期間を示した。

オミクロン株感染確定症例検体を、リアルタイムRT-PCR・ウイルス分離試験

対象は検疫および国内で検出されたオミクロン株感染確定症例。経過中に臨床目的もしくは研究目的で採取された(陰性を含む)すべての呼吸器検体(唾液および鼻咽頭スワブ)の残余検体について、感染研にてリアルタイムRT-PCRおよびウイルス分離試験を実施した。採取の目安としては、SARS-CoV-2感染の初回陽性検体の検体採取日(以下、便宜的に「診断日」と定義)を0日目としてそこから、(1)0~1日目、(2)3~5日目、(3)6~8日目、(4)9日目以降、(5)退院時陰性検体(2回分)とした。

RNAは唾液および鼻咽頭拭い液検体200µLからMaxwell RSC miRNA Plasma and Serum kitもしくはMagMAX Viral/Pathogen Nucleic Acid Isolation Kitを用いて抽出した。新型コロナウイルスN2領域をターゲットとしてOne Step PrimeScript(TM) III RT-qPCR Mixを用いてリアルタイムRT-PCRによりCq値を測定した。陰性と判定された検体のCq値は45を代入して解析した。

また、検体と分離用培地を混和し、VeroE6/TMPRSS2細胞に接種/培養を行い、接種後3日、5日に細胞変性効果の有無について評価した。また、細胞変性効果が見られた時点もしくは5日目に培養上清を回収し、リアルタイムRT-PCRにてSARS-CoV-2の確認試験を実施し、ウイルス分離の判定を行った。

21例中、無症状4例、軽症17例、中等症以上なし

2021年12月22日までに登録された対象症例は、21例のべ83検体だった。年齢中央値33歳(四分位範囲29-47歳)、男性19例(90%)、女性2例(10%)だった。

ワクチン3回接種は2例(10%)で、その内訳はファイザー社製のワクチン3回の1例とジョンソンエンドジョンソン社製のワクチンの後にファイザー社製のワクチン2回接種した1例だった。そのほかはファイザー社製のワクチン2回が8例(38%)、武田/モデルナ社製のワクチン2回が9例(43%)、未接種者はいずれも未成年で2例(10%)だった。ワクチン2回接種から2週間以内の経過の者はいなかった。

退院までの全経過における重症度は、無症状が4例(19%)、軽症が17例(81%)だった。中等症以上・ICU入室・人工呼吸器管理・死亡例はいなかった。

、ウイルス分離ともに発症・診断日から3~6日までが最大

Cq値は診断日および発症日から3~6日の群で最低値となり、その後日数が経過するにつれて、上昇傾向だった。診断または発症10日目以降でもRNAが検出される検体は認められ、Cq値20台の検体を2例認めたが、いずれも症状消失後2日以内の検体だった。

診断日および発症日からの日数が3~6日目の群でウイルス分離可能な割合は最も高く、その後は減少傾向だった。特に、診断および発症10日目以降、ウイルス分離可能な症例は認めなかった。また未成年患者検体からもウイルス分離は可能だった。PCR陰性でウイルス分離された検体は認めなかった。

ワクチン2回接種の無症状・軽症者、10日目以降に感染性ウイルス排出の可能性は低い

今回の報告では、国内のオミクロン株症例における感染性持続期間が検討された。オミクロン株症例において、Cq値は診断日および発症日から3~6日の群で最低値となり、その後日数が経過するにつれて、上昇傾向であった。診断または発症10日目以降でもRNAが検出される検体は認められたが、ウイルス分離可能な検体は認めなかった。これらの知見から、2回のワクチン接種から14日以上経過している者で無症状者および軽症者においては、発症または診断10日後以降に感染性ウイルスを排出している可能性は低いことが示唆された。

同調査の制限として、ワクチン接種歴のある者が大多数であったこと、無症状者および軽症者が調査対象であったことなどが挙げられる。また、ウイルス分離試験の結果は検体の採取方法・保管期間・保管状態等に大きく依存することから、陰性の結果が検体採取時の感染者体内に感染性ウイルスが存在しないことを必ずしも保証するものではないことに注意が必要。

同報告の最後には、同調査に協力をした各自治体関係者および各医療関係者に対し、謝辞が述べられている。

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