開発中の新規siRNA治療薬、少なければ年6回の定期投与ですむ治療提供の可能性
仏サノフィ社は12月14日、fitusiranについて、有効性と安全性を評価する2件の第3相試験のデータを第63回米国血液学会(ASH)で発表したことを報告した。インヒビターを有さない血友病の患者対象のATLAS-A/B試験結果は、レイトブレイキングセッションで発表され、第VIII因子または第IX因子に対するインヒビターを有する患者を対象としたATLAS-INH試験の結果は、プレナリーセッションで共有された。
fitusiranは、インヒビターの有無を問わない血友病AおよびB患者に定期的に皮下投与する治療薬として開発中の新規siRNA(small interference RNA)治療薬。同剤は、血液凝固を阻害するタンパク質アンチトロンビン濃度を下げ、十分量のトロンビン産生を促すことで止血バランスを調整し出血を抑制する目的で設計された。また、同剤は、Alnylam Pharmaceutical社のESC-GalNAcコンジュゲート技術を用いて、効力と持続性に優れた皮下投与製剤として開発。同剤は、血友病AおよびB患者に、少なければ年6回の定期投与ですむ治療を提供できる可能性があるとされている。なお、開発中であり、世界の規制当局による評価はまだ完了していない。
凝固因子製剤の使用経験+インヒビター非保有の重症血友病A・Bで年間出血率が有意に減少
まず、ATLAS-A/B第3相試験(NCT03417245)。これは、凝固因子製剤による出血時補充療法の経験があり、インヒビターを有さない重症の血友病AまたはBの12歳以上の患者を対象とした第3相無作為化非盲検試験。参加者(n=120)を2:1の割合で無作為化し、fitusiran 80mgを月に1回皮下投与する群と、出血時に凝固因子製剤の投与を行う群に割り付けた。主要評価項目は、年間出血率とした。
試験の結果、fitusiran定期投与群は、凝固因子製剤の出血時投与群に比べ、治療を要した出血の年間出血率が89.9%少なく(95%CI[84.1%;93.6%],P<0.0001)、統計学的に有意で臨床上意義ある減少が認められた。
治療を要した出血の年間出血率の中央値(四分位範囲)について、fitusiran定期投与群は0.0(0.0;3.4)、凝固因子製剤の出血時投与群では21.8(8.4;41.0)だった。治療を要した出血の発生回数が0回の患者の割合は、fitusiran定期投与群では50.6%(n=40)、凝固因子製剤の出血時補充療法群では5.0%(n=2)だった。
fitusiran定期投与群で5名(6.3%)以上に現れた有害事象は、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)増加、上気道感染、鼻咽頭炎、腹痛、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)増加、咳嗽、関節痛、喘息、胃炎および頭痛だった。重要な有害事象として、正常値上限の3倍を超えるALTまたはASTの増加を検討したところ、fitusiran投与群の15名(19.0%)に認められた。血栓塞栓症も重要な有害事象として検討したが、同事象が疑われたか確認された患者はいなかったとしている。
第VIII/IX因子に対するインヒビター保有の血友病A・Bで年間出血率が有意に減少
続いて、ATLAS-INH第3相試験(NCT03417102)。これは、第VIII因子または第IX因子に対するインヒビターを保有する血友病AまたはBの12歳以上の男性患者を対象とした第3相無作為化非盲検試験。バイパス製剤(BPA)の出血時治療を受けている参加者(n=57)を2:1の割合で無作為化し、fitusiran 80mgを月に1回皮下投与する群と、BPAの出血時投与を続行する群に割り付けた。主要評価項目は、年間出血率とした。
試験の結果、fitusiran定期投与群は、BPA群に比べ、治療を要した出血の年間出血率が90.8%少なく(95%CI[80.8%;95.6%],P<0.0001)、統計的に有意な減少が認められた。
治療を要した出血の年間出血率の中央値(四分位範囲)について、fitusiran定期投与群は0.0(0.0;1.7)、BPA出血時投与群では16.8(6.7;23.5)だった。治療を要した出血の発生回数が0回であった患者の割合について、fitusiran定期投与群では65.8%(n=25)、BPA出血時投与群では5.3%(n=1)だった。
fitusiran定期投与群で5名(12.2%)以上に現れた有害事象は、ALT増加、AST増加、上腹部痛、γグルタミルトランスフェラーゼ増加、頭痛、上気道感染、関節痛、血中アルカリホスファターゼ増加、トランスアミナーゼ上昇だった。重要な有害事象として検討したALTとASTの正常値上限の3倍を超える増加、および血栓塞栓症は、fitusiran定期投与群でそれぞれ10名(24.4%)および2名(4.9%)確認された。
なお、両試験のfitusiran定期投与群で報告された有害事象は、fitusiranのリスクとして既に確認されている事象や、基礎疾患である重症の血友病AまたはBに関連するリスクと概ね一致する内容だったとしている。
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・サノフィ株式会社 プレスリリース