実効再生産数は首都圏で1.23、関西圏で1.02
国立感染症研究所は12月23日、第64回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(2021年12月22日、厚生労働省)の報告による、日本における新型コロナウイルス感染症の状況等について発表した。
まず感染状況について、全国の新規感染者数(報告日別)は、直近の1週間では10万人あたり約0.9と、依然として非常に低い水準となっており、新規感染者が確認されない日が継続している地域もある。一方、感染伝播がいまだに継続している地域があることに加え、一部の地域では、事業所や社会福祉施設、小学校等でのクラスターや感染経路不明事案の発生による一時的な増加も見られ、直近の今週先週比は1.35と増加傾向となっており、1以上が2週間以上継続している。実効再生産数は、全国的には、直近(12/5時点)で1.11と1を上回る水準となっており、首都圏では1.23、関西圏では1.02となっている。
オミクロン株は急激な感染拡大を想定すべき状況
オミクロン株は、11月24日に南アフリカからWHOへ最初に報告されて以降、多くの国で感染例が報告され、複数の国ではいわゆる市中感染も確認されている。日本では、海外から入国する際の検疫などの水際関係でコロナ陽性が判明した者の複数で、ゲノム解析によりオミクロン株の感染が確認されている。また、今般、海外渡航歴がなく、これまで判明したオミクロン株確定例との関連性が確認されていない3名からオミクロン株が確認された。今後、感染拡大が急速に進むことを想定すべき状況にある。
オミクロン株については、ウイルスの性状に関する実験的な評価や疫学的な情報は限られているが、WHOおよび各国機関からの発表や査読前論文などによると、感染性・伝播性の高さ、再感染のリスク、ワクチンの感染予防効果や一部の治療薬の効果が低下する可能性などが指摘されている。他方、重症度については十分な知見が得られていないが、急激な感染拡大により、医療提供体制が急速にひっ迫する可能性に留意が必要である。
水際対策から国内対策へ重点移行し、感染状況に応じた体制強化を
水際措置におけるオミクロン株対策への重点化に加え、国内のサーベイランス体制の強化のため、全ての陽性者に対する変異株PCRスクリーニングや、特に渡航歴のある陽性者に対する全ゲノム解析を継続させることが必要。引き続き、WHOや諸外国の動向や、臨床、疫学及びウイルス学的な情報を収集・分析するとともに、国立感染症研究所におけるオミクロン株の感染性、重症度、ワクチン効果に与える影響などの評価や国内での発生状況も踏まえ、今後、国内における急激な感染拡大を防ぐため、水際対策から国内対策へ重点を移していくことの必要性を市民に周知していくことが求められる。
また、国内でオミクロン株による感染が発生した場合、オミクロン株感染例と同一空間を共有した者については、マスクの着用の有無や接触時間に関わらず、幅広な検査の対象としての対応を行うことが推奨される。その上で、先般、政府が示したワクチン接種の前倒し、経口治療薬の提供開始や検査体制の強化を内容とする「予防・検査・早期治療の包括強化策」を講じることを始め、感染状況に応じた医療提供体制・公衆衛生体制の強化についても進めていくことが必要。
できるだけ少人数での活動に抑えつつ、ワクチン接種・追加接種の実施を
全国の新規感染者数は依然として非常に低い水準となっているが、増加傾向にある。また、都市部のみならず幅広い地域で夜間滞留人口が増加している。特に東京の夜間滞留人口は、2020年10月末に記録した最高水準付近を推移している。今後、さらに気温が低下し、屋内での活動が増えていく。また、忘年会、クリスマスやお正月休み等の恒例行事により、普段会わない人々との交流が増えることに加え、年末・年始に向けて帰省などによる人の移動も活発化することにより、感染が急拡大するおそれがある。このため、感染リスクの高い活動を控え、できるだけ少人数での活動に抑えることが必要。
オミクロン株の感染拡大が懸念される中で、特に、未接種者へのワクチン接種を進めることも必要であり、自治体においては、ワクチン接種に至っていない者への情報提供を進めることが求められる。あわせて、12月から開始している追加接種を着実に実施していくことも必要。その際、上述の強化策に基づき、医療従事者等や重症化リスクが高い高齢者を対象とした前倒しを円滑に実施することが求められる。
デルタ株による感染伝播も継続、年末年始は自覚を持って行動を
現在、デルタ株による感染伝播は継続しており、今後、年末年始の休暇などをきっかけとした感染拡大にも注意が必要。また、オミクロン株が国内で拡がっていることも想定すべき状況にあるとの認識をもって国民が行動することが必要。従って、ワクチン接種者も含め、マスクの正しい着用、手指衛生、ゼロ密や換気といった基本的な感染対策の徹底を継続することが必要であり、これは、オミクロン株でも推奨されている。また、軽度の発熱、倦怠感など少しでも体調が悪ければ外出を控えるとともに、積極的に受診し、検査につなげることも重要。飲食店を利用する際は、第三者認証適用店を選び、飲食時以外はマスクを着用すること、また、外出の際は、混雑した場所や感染リスクの高い場所を避けることが必要。特に、帰省や旅行等は日常では生じない接触が生じる機会となること等を踏まえ、ワクチン接種を受けられない者を対象とした都道府県での無料検査を受けるとともに、発熱等の症状がある場合は県をまたぐ移動は控えることが必要である。
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