部会では、▽申請の根拠とされたAD患者を対象としたアデュカヌマブの二つの国際共同第III相試験「ENGAGE試験」「EMERGE試験」の結果に一貫性がないこと▽探索的な評価項目である脳内アミロイドβプラーク低下の臨床的意義が確立していないこと▽同剤の投与によって脳の浮腫や出血などが見られること――の3点で、アデュカヌマブの承認を見送った。
EMERGE試験では、アデュカヌマブの認知機能・臨床症状の指標について、高用量投与群がプラセボ群と比べて78週時点でのベースラインから臨床症状の悪化を抑制し、主要評価項目を達成したとしている。バイオジェンはENGAGE試験においても、アデュカヌマブの高用量を投与したサブグループで試験の結果を裏付けるものが得られたとしたが、両試験の結果の一貫性を認めなかった。
アミロイドβプラークの減少を示した臨床試験データで、ADの認知機能改善を実証できないと判断した。米国食品医薬品局(FDA)は6月、アミロイドβプラークの減少を示した臨床試験データをもとに代理エンドポイントに基づき迅速承認したが、日本では今回、臨床的有用性が十分に確立していないとの異なる見解を示した。
一方で、安全性リスクも懸念材料となった。欧州医薬品庁(EMA)の欧州医薬品委員会(CHMP)がアデュカヌマブの投与により脳の浮腫や出血を引き起こす安全性の懸念から承認に否定的な見解を採択したが、日本でも安全性の再検討が必要とした。
審議結果から、「プラセボ対照二重盲検試験など適切なデザインの臨床試験の成績に基づき、有効性や安全性を再検討し、その結果に応じて再度審議する必要がある」と結論づけた。
厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課は「欧州EMAの見解とは異なり承認拒否というスタンスではない。アデュカヌマブの薬剤としてのポテンシャルはあるので、あくまでもデータ等でしっかり示すことで再度議論すべきとの結論に至った」と説明した。
今後、バイオジェンから追加データが提出されれば、医薬品医療機器総合機構(PMDA)で審査を行い、改めて部会で審議する予定だ。ただ、追加の臨床試験が必要になれば、「一定程度の年数が必要になるのではないか」との見方を示した。