■総務省が調査‐新薬投資の抑制が進む
総務省統計局は、2021年の科学技術研究調査結果を公表した。20年度の企業や大学の科学技術研究費は前年度比1.7%減の19兆2365億円となり、4年ぶりに減少に転じた。産業別では「医薬品製造業」が1.3%減の1兆3216億円と2年連続で減少した。ただ、自動車や航空機、船舶などを製造する「輸送用機械器具製造業」の3兆8796億円に次いで2番目に企業研究費が高い産業は変わらず、全産業の9.5%と0.1ポイントの微増となった。
研究費は3年連続で増加し、過去最高を更新した前年から国内総生産(GDP)に対する研究費の比率は、3.59%と前年度に比べ、0.08ポイント上昇。研究費を研究主体別に見ると、企業が13兆8608億円と研究費全体の72.1%を占め、大学等が3兆6760億円で19.1%、非営利団体・公的機関が1兆6997億円で8.8%を占めた。非営利団体・公的機関が3.4%増となっているのに対し、企業が2.5%減、大学等が1.2%減となっている。
企業の研究費を産業別に見ると、医薬品製造業が1.3%減の1兆3216億円と1兆3000億円台に転落。ただ、研究費の多さは「輸送用機械器具製造業」に次いで2番目の産業を維持した。
売上高に対する研究費の比率は医薬品製造業が9.68%と全産業で最も高かった一方、前年度から0.40ポイント低下し、10%を割り込んだ。
全製造業の売上高に対する研究費比率も3.36%と0.05ポイントの低下となっているが、医薬品製造業は19年度が0.97ポイント、20年度が0.40ポイント下がっており、売上ベースで見ると新薬の研究開発に投じる費用割合が低下基調となっている。
企業の自然科学に使った研究費を性格別に見ると、開発研究費が10兆5946億円と企業の自然科学に使用した研究費全体の76.7%となり、応用研究費が2兆2027億円で15.9%、基礎研究費が1兆0192億円で7.4%を占めた。
前年度比では、基礎研究費が5.0%減、応用研究費が3.1%減、開発研究費が2.1%減と揃って減少していた。
医薬品製造業の基礎研究費は2567億円となり、全産業でトップとなった。自然科学研究費に占める基礎研究の割合は19.4%と前年度から0.5ポイント低くなったが、それでも全体の2割近くを新薬の研究開発に投じていた。
2021年3月31日現在の研究者数を産業大分類別に見ると、「製造業」が45万9600人と前年度から3.9%増加。医薬品製造業の研究者は2万1800人と6.8%の伸びとなり、3年ぶりの増加となった。
全産業の研究者1人当たりの研究費は、4.0%減の2689万円となった。産業別研究者1人当たりの研究費は医薬品製造業が6059万円と最も高かったが、前年度から7.6ポイントの低下となっている。