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【IASR速報】新型コロナ「ブレイクスルー感染」の積極的疫学調査報告-感染研

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2021年12月20日 AM10:40

ワクチン接種後感染の調査、今回は部分免疫に加えブレイクスルー感染を含む

(感染研)は12月17日、新型コロナワクチン接種後に新型コロナウイルス感染症と診断された症例に関する積極的疫学調査(第二報)を、病原微生物検出情報()の速報として発表した。

感染研では、感染症法第15条の規定に基づいた積極的疫学調査として、新型コロナワクチン接種後に新型コロナウイルス感染症()と検査診断された症例(ワクチン接種後感染症例)に関する調査を行っている。2021年7月にこの第一報が報告されたが、今回はその後の進捗を報告した続報となる。なお、前回同様、同調査では、ワクチンの有効性やワクチン接種後感染の発生割合については評価していない。また、今回の報告は、迅速な情報共有を目的とした資料であり、内容や見解は知見の更新によって変わる可能性がある。

調査方法の詳細は第一報を参照されたい。第二報では2021年4~8月に報告された症例を対象としたが、7月26日に同調査の事務連絡が改正され、それ以降は調査対象が2回接種後14日以降の、いわゆるブレイクスルー感染症例のみを調査対象としている。第一報同様、免疫が部分的に付与された1回目接種後14日〜2回目接種後13日(部分的接種者の感染)とブレイクスルー感染症例は分けて解析されたが、これら2群は集団の特徴が異なることから、比較して解釈すべきではないものだ。

年齢層は幅広く感染者との接触7割、場面はさまざま

2021年4~8月に33都道府県から、ワクチン接種後感染者343例(うちブレイクスルー感染症例257例)が報告された。その基本特性は、年齢中央値(範囲)53(16-100)歳、男性125例(36.4%)、女性218例(63.6%)だった。免疫不全のある者((狭義の)免疫不全の診断を受けた者)は2例(0.7%)、ステロイド等の免疫抑制剤の使用歴は7例(2.3%)で認めた(欠損値を除く302例)。

武田/モデルナ社製ワクチンの製造販売承認がファイザー社製より遅かったことや、症例が探知されやすい医療従事者や高齢者の多くがファイザー社製を接種していることもあり、298例(93.4%)がファイザー社製ワクチンの接種後だった(欠損値を除く319例)。

症例報告書提出時点での重症度(データ欠損23例を除く320例)は、107例(33.4%)が無症状、179例(55.9%)が軽症、15例(4.7%)が中等症Ⅰ、18例(5.6%)が中等症Ⅱ、1例(0.3%)が重症だった。感染者との接触歴を約7割の者で認め、接触した場面や接触した者は家庭内、医療・介護関連、友人・知人、職場、部活等だった。

呼吸器検体中のウイルス量はデルタ株>アルファ株

11月15日現在、呼吸器検体については316例(うちブレイクスルー感染症例235例)から収集され、N2領域のPCR再検査で247例が陽性となり、サイクル値(Cq値)の中央値(範囲)は27.0(11.1-38.8)だった。ウイルス分離については、検体量不十分であった6例、および11月15日時点で未施行であった6例を除いた235例で施行され、97例(41.3%)で分離可能だった。変異検出PCRの結果から240例でウイルスの系統が推定でき、B.1.617.2系統()157例、B.1.1.7系統(アルファ株)76例、R.1系統6例、P.1系統(ガンマ株)1例だった(一部はゲノム解析により確認済み)。各系統の検出状況はそれぞれの系統の国内での流行状況と概ね一致しており、大きな偏りは認められなかった。

ブレイクスルー感染症例のうち検出数が多かったアルファ株、またはデルタ株感染者(ブレイクスルー感染症例に限る)の呼吸器検体中のウイルス量を比較したところ、Cq値の平均値(95%信頼区間(CI))およびウイルス価の幾何平均値(95%CI)がそれぞれ、アルファ株で29.5(26.3-31.3)・32.8(16.3-65.9)、デルタ株で25.3(24.3-26.3)・155.7(87.8-276.4)であり、デルタ株感染者はアルファ株感染者に比べて、呼吸器検体中のウイルス量が統計学的に有意に多かった。

ブレイクスルー感染の多くは軽症/無症状

今回の報告では、国内におけるワクチン接種後感染の積極的疫学調査の第二報として、疫学的特徴およびウイルス分離の可否、検出されたウイルスへの変異検出PCRの結果、感染者における抗体応答が示された。前回報告では大多数が優先接種対象である医療従事者であったが、今回の報告では4割弱は医療従事者以外であり、10代を除いた広い年齢層でブレイクスルー感染を認め、家庭内、医療・介護関連、友人・知人(会食を含む)、職場、部活など、感染が起こったと疑われた機会は多岐にわたることがわかった。ただし、接触歴の割合については検査頻度等の違いを反映している可能性があることから、解釈には注意が必要だ。また、免疫不全や免疫抑制剤を使用している者は引き続きまれだった。同調査ではワクチンによる重症化抑制効果の評価を目的としていないが、多くが軽症および無症状だった。

無症状を含む約4割のワクチン接種後感染者の呼吸器検体中には感染性のあるウイルスが存在しており、ワクチン接種後の者においても、アルファ株感染者と比較して、デルタ株感染者の排出ウイルス量が多いことが示唆された。今後も免疫逃避能を有する新たな変異ウイルスの出現の監視など、病原体解析を継続して実施していく必要がある。なお、ワクチン接種後感染例の調査については、8月24日以降、より効率的な積極的疫学調査のために、重症例やクラスター例に絞って調査を継続することとなっている。

今回の調査の制限は第一報に記載の通り。また、同調査で報告されたものは、国内で発生した新型コロナワクチン接種後感染の一部であることに留意が必要だ。

ブレイクスルー感染例の大多数は感染に対する抗体応答も誘導されている

なお、海外における臨床試験や観察研究と同様に、国内においてもデルタ株に対する新型コロナワクチンの高い有効性は示されており、同報告は日本において承認されている新型コロナワクチンの高い有効性を否定するものではない。

今回報告された症例の一部について、診察した医師からの求めに応じて感染研で血清抗体検査を実施し、これを後ろ向きにまとめた研究の暫定結果がIASRの別の速報として同日に発表されており、ブレイクスルー感染例の大多数は、ワクチン不応者(ワクチンに対する抗体応答の全くない者)ではなく、感染に対する抗体応答も誘導されていることが示されている。また、「候補となっているワクチンの接種後、一定期間経過した集団における抗体価の中央値をもとに当該ワクチンの有効性が推定できる」という相対的な指標を得られつつある一方で、個々人において「この抗体価以上であれば感染・発症を予防できる」といった絶対的な閾値については、その存在そのものがいまだ不明であると考察されている。

同報告の最後には、同調査に協力をした多くの自治体や医療機関に対する謝辞が述べられている。

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