補綴装置使用の有無を含めた歯の状態と孤食との関連は不明だった
東北大学は12月16日、歯や義歯の利用状態が悪いほど孤食が多く、歯の数が20本以上の人に比べて、10本未満で義歯等を使っていない人では孤食のリスクが1.81倍高いことが明らかにしたと発表した。この研究は、東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 健康推進歯学分野の相田潤教授、東北大学大学院歯学研究科 国際歯科保健学分野の小坂健教授、同大大学院歯学研究科 国際歯科保健学分野の衣川安奈大学院生らの研究グループによるもの。研究成果は、「Appetite」に掲載されている。
画像はリリースより
高齢者の孤食が死亡や抑うつのリスクを増加させ、誰かとともに食事をすることはフレイルのリスクを低下させることが、先行研究で報告されている。歯の状態を含む口腔の健康は、コミュニケーションや社会関係の重要な役割である発話や笑顔、食事と強く関係している。高齢者において歯を失った人では、閉じこもりが多いことが報告されており、最近の研究では、孤食とオーラルフレイルにも関連があることが示唆されている。しかし、入れ歯(義歯)やブリッジ等の補綴装置使用の有無を含めた歯の状態と孤食との関連は明らかになっていない。
研究グループは今回、65歳以上の要支援・要介護状態にない高齢者を対象として、補綴装置使用の有無を含む歯の状態と孤食に関連があるかを明らかにすることを目的とした。
10歯未満・補綴装置未使用で孤食リスク「高」、同居人がいても口腔状態が悪いと孤食傾向
1時点のデータを使った同研究では、日本老年学的評価研究機構の2016年の調査に回答した人を対象とした。解析には、性別と食事状況の項目に欠損がある人、普段の生活で介護・介助の必要がある人を除外した。
歯の本数(20本以上/10~19本/10本未満)と義歯・ブリッジ等の補綴装置の使用の有無を組み合わせた歯の状態(20歯以上/10-19歯で補綴装置使用/10~19歯で補綴装置未使用/10歯未満で補綴装置使用/10歯未満で補綴装置未使用)と、孤食の関連を調べた。孤食の調査には、「食事は誰とすることが多いですか」という項目を使用し、「ひとり」だけを回答した人を孤食群、「ひとり」を含む「配偶者」「子ども」「孫」「友人」「その他」のいずれかを回答した人を非孤食群とした。さらに、性別、年齢、世帯状況、教育歴、等価所得、手段的日常生活動作(IADL)、糖尿病の有無、抑うつ状態、友人との交流頻度の影響を、統計解析で除外した。また、独居や同居が歯の状態と孤食にどのように関連するかを明らかにするため、世帯人数との関連も検討した。
その結果、15万6,287人が解析対象者(女性が53.8%)だった。平均年齢は73.7(SD=6.0)歳。8万6,560人(55.4%)が自分の歯を20本以上有しており、2万4,449人(15.6%)が孤食をしていた。
分析の結果、20歯以上の人と比べ、10歯未満で補綴装置を使用していない人で孤食をしているリスクが有意に高い結果を認めた(オッズ比=1.81(95%信頼区間:1.58-2.07))。また、独居や同居ごとの歯の状態と孤食の関連は、独居している人で高い傾向が見られたが、同居している人でも口腔状態が悪いと孤食をしている傾向が見られたという(p=0.002)。
歯の喪失予防と義歯等での口腔機能維持が、特に独居高齢者の孤食リスク減少につながる可能性
今回の研究により、歯の状態と孤食との間に有意な関連が見られた。この関連は一人暮らしの高齢者において、より大きい傾向を示したが、同居している高齢者においても歯の状態が悪いと孤食のリスクが高くなることが明らかになった。
「歯の喪失を予防すること、義歯等を用いて口腔機能を維持することは、孤食のリスクの減少につながることと、特に独居高齢者でこの影響が強い可能性が示唆された」と、研究グループは述べている。
▼関連リンク
・東北大学 プレスリリース