今回の違反案件は、小野薬品がオノアクトの販売拡大と奨学寄附金提供を関連づけて、2018年3月20日、大学名義の口座に奨学寄附金として200万円を振り込んだもの。その後、当該准教授によって電子カルテのオノアクト使用履歴において虚偽の入力などもあり、当該大学附属病院に対する平均売上高は18年度に前年の2倍、19年度にはさらにその2倍の水準にまで達したが、20年度には准教授の不正が発覚して18年度以前の状況まで激減した。
小野薬品は、18年度から奨学寄附金をウェブ申請による審査、承認手続とするシステムに変更すると共に、営業部門が奨学寄附金提供に一切関与しないような制度とした。
しかし、19年6月に前回案件と同じ当該教授から、新制度に基づく手続による奨学寄附金の申請があり、審査手続を経て11月に奨学寄附金150万円が小野薬品から大学に提供された。
これについて小野薬品は、寄附金額の決定においては過去の実績が考慮されていたこと、当該病院へのオノアクト売上が18年度以降急増しており、それが奨学寄附金提供と関連する可能性が高かったことが見過ごされたままであったと説明している。
公取協は、小野薬品の行為は「寄附に関する基準」で求められている「寄附の見返りとして、自社の医療用医薬品の購入に関する有利な取扱いを決して求めない」という会員会社の基本的対応の遵守を怠ったものとして、公競規第3条に違反すると判断を下した。
同行為は、奨学寄附金提供に関する基本的姿勢を逸脱するものであり、製造販売業者による医療機関等に対する不当な取引誘引行為防止の考え方が営業現場で徹底していなかったこと、本社でもその監視が徹底していなかったことが認められたことのほか、小野薬品の当該社員が贈賄罪で有罪判決を受けたことを踏まえ、今回の「警告」措置をとった。
なお同公取協は、同様の行為は規約違反となることから、会員各社に対して奨学寄附金提供で違反がないよう自社の責任により慎重に対応するよう注意喚起した。