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脳卒中、国内20年間の患者の入院時重症度・退院時機能転帰の推移を解明-国循ほか

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2021年12月08日 AM11:30

2000~2019年のJSDB登録例、発症後7日以内に入院した患者の入院時神経学的重症度など評価

国立循環器病研究センターは12月7日、20年間の臨床情報を用いて、日本の脳卒中患者の入院時重症度と退院時機能転帰の推移を解明したと発表した。この研究は、同研究センターの豊田一則副院長が代表者を務める国内多施設共同の脳卒中急性期患者登録事業、日本脳卒中データバンク(Japan Stroke Data Bank:JSDB)の研究グループによるもの。研究成果は、「JAMA Neurology」オンライン版に掲載されている。


画像はリリースより

脳卒中のコホート研究は、一般住民を対象とした研究と、JSDBのように病院入院患者を対象とした研究に大別される。全国レベルの多施設共同による入院患者対象研究は30前後の国で行われているが、登録患者の脳卒中の性状を長期間にわたって検討した研究はまれだ。

日本の脳梗塞急性期治療は、この20年間にいくつかの転換点があった。ちょうど5年毎に2005年に静注血栓溶解療法の承認、2010年にカテーテルを用いた血栓回収治療機器の承認、2015年には現在頻用される血栓回収治療機器であるステントレトリーバーの効果が世界レベルで証明された。これらの出来事に付随して、脳卒中診療環境も大きく変わってきた。

そこで、JSDBの2000~2019年までの登録例について、発症後7日以内に入院した急性期の脳梗塞、、くも膜下出血患者の入院時神経学的重症度を、国際標準尺度であるNational Institutes of Health (NIH)Stroke Scale(42点満点の評価法で、高点数ほど重症)と世界脳神経外科連合(WFNS)分類(くも膜下出血患者に用いられる5段階の評価法で、高点数ほど重症)を用いて、退院時の機能転帰(患者自立度)を同じく国際標準尺度である修正ランキン尺度(0~6の7段階の評価法で、高点数ほど不良)を用いて評価し、同尺度の0~2を転帰良好、5~6を転帰不良と定義。これら尺度の経年的変化を検討した。

・脳出血・くも膜下出血は発症時年齢上昇、軽症化

20年間に登録された18万3,080例のうち、脳梗塞患者が13万5,266例(女性39.8%、発症時年齢中央値74歳)、脳出血患者が3万6,014例(女性42.7%、年齢中央値70歳)、くも膜下出血患者が1万1,800例(女性67.2%、年齢中央値64歳)を占めた。3病型ともに、20年の経過の間に発症時年齢が上昇し、NIHSSやWFNSの値が低下、つまり軽症化した。

脳梗塞患者における転帰良好の割合は、年齢調整後に経年的に上昇(女性で1年毎のオッズ比1.020、95%信頼区間1.015-1.024;男性で1.015、1.011-1.018)。急性期再灌流療法(静注血栓溶解療法またはカテーテルを用いた血栓回収療法)などで調整すると有意な上昇を認めなくなり、男性ではむしろ割合が低下。転帰不良や急性期死亡の割合は、男女とも経年的に低下した。

脳出血患者における転帰良好の割合は、男女とも年齢などでの調整後に経年的に低下した。転帰不良や急性期死亡の割合は、女性で経年的に低下する一方で、男性には有意な増減の傾向を認めなかった。

くも膜下出血患者における転帰良好の割合は、男女とも年齢などでの調整後に経年的に有意な増減を認めず、転帰不良や急性期死亡の割合は男女とも経年的に低下した。

3病型ともに入院時の重症度軽症化に、予防治療・診断技術の進歩

脳卒中の診療は、この20年間に大きく変貌した。しかし診療環境の変化が患者への治療効果に結びついているかを判断することは、難しい。同研究はこのような疑問への答えを導くべく、行われた。

脳卒中の3病型ともに入院時の重症度が軽症化している原因には、予防治療の進歩に伴う重症例の減少(たとえば降圧治療の厳格化に伴う、重症脳出血例の減少など)に加えて、診断技術の進歩(たとえば頭部MRIの普及に伴う、軽症脳卒中患者の診断率向上など)が挙げられる。

一方で、退院時転帰には病型間で違いが目立つ。脳梗塞では、急性期再灌流療法などこの20年間で登場した新たな治療が、転帰を改善した可能性が考えられる。出血性脳卒中で転帰改善傾向が明らかでない一因に、後遺症軽減に有効な決定的治療がまだまだ乏しい点が考えられるという。

このような脳卒中診療の大きな流れを、国内多施設共同で集積した臨床情報に基づいて世界に向けて発信できたことによって、今後世界レベルで脳卒中医療を考えるうえでの布石を打てた、と研究グループは述べている。

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