■財政審が建議
財政制度等審議会は3日、2022年度予算編成に関する建議をまとめ、鈴木俊一財務相に提出した。診療報酬改定については薬剤費総額が増加しているのを踏まえ、診療報酬本体の「マイナス改定」を続けることなくして医療費の適正化は到底図られないと指摘。薬価総額のマクロ経済スライドの導入も検討しつつ、調整幅の廃止をはじめ聖域ない薬価改定の厳格化に踏み込むべきと提言した。調剤報酬については剤数や日数に比例した調剤料の算定方法の適正化や同一敷地内薬局の調剤基本料、後発品調剤体制加算の見直しなどを求めた。
22年度薬価改定に向けては、毎年薬価改定の実現などもう一段の強力な薬剤費適正化の取り組みが必要と指摘。マイナス改定が続いてきた薬価部分について、既存医薬品の薬価は下がったとしても、薬剤使用量の増加や新規医薬品の保険収載で薬剤費総額が年平均伸び率2%強で増加し、医薬品市場は経済成長率を大きく上回る成長を続けてきたと分析した。
その上で、薬剤費総額の伸びが適正な水準か否か、拡大している医薬品市場の中での分配をいかにイノベーションの推進など必要な課題に振り向けていくかに焦点を当てていかなければならないとの問題意識を示し、「財政影響を勘案して全て収載されている新規医薬品の保険収載可否を判断することが必要」と言及。具体的には、経済成長率の見通しなどマクロ指標による政策目標に合わせて、薬剤費の総額上限を設定する薬価総額のマクロ経済スライドを導入することを「十分考慮に値する」とした。
毎年薬価改定の完全実施や、製造原価などの開示度に応じた新薬の算定薬価の厳格化、毎年薬価改定のタイミングで新薬創出等加算の累積額を控除する仕組み導入、市場実勢価格の加重平均値に対して薬価に上乗せを行っている調整幅2%の段階的縮小、OTC類似医薬品の保険給付範囲からの除外なども求めた。
一方、調剤報酬については、薬剤師の対物業務から対人業務へと評価する方向にシフトする中、技術料が調剤基本料や調剤料に依存した収益構造が依然として継続していると指摘。調剤料について剤数や日数に比例した算定方法を適正化するなどの見直しを講じるよう提言した。かかりつけ薬局への評価は、調剤基本料のうち地域支援体制加算の実績要件が「制度化された地域連携薬局の要件との整合性が明確でない」と疑義を呈し、地域連携薬局に対して調剤報酬上の評価を行うよう求めた。
また、同一敷地内薬局の調剤基本料を適正化するよう要求。後発品調剤体制加算については、廃止を含めた見直しと減算について対象を大幅に拡大するなど減算を中心とした制度にすべきと訴え、処方側の一般名処方加算や後発品使用体制加算のあり方も同じ方向で見直しを求めた。
そのほか、一定期間内に処方箋を反復利用できるリフィル処方の導入や診療報酬で多剤・重複処方について減算の措置を導入・拡充すべきとした。