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新型コロナ治療薬レムデシビル、腎障害患者における薬物動態モデルを構築-京大ほか

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2021年11月29日 AM11:00

腎障害患者への投与は「推奨しない。有益性が危険性を上回る場合に考慮」

京都大学は11月25日、腎障害患者におけるレムデシビルの薬物動態モデルを構築し、腎機能に応じた投与量設計を提案したことを発表した。この研究は、同大医学部附属病院薬剤師の助石有沙美氏、薬学研究科の米澤淳准教授、医学研究科の伊藤功朗准教授らの研究グループ(医学部附属病院薬剤部(薬学研究科)、呼吸器内科、集中治療部、腎臓内科、初期診療・救急科)が、島津製作所と共同で行ったもの。研究成果は、「CPT:Pharmacometrics & Systems Pharmacology」にオンライン掲載されている。また、同成果は、第69回日本化学療法学会西日本支部総会(2021年11月5~7日)において、第16回日本化学療法学会西日本支部支部長賞 臨床部門を受賞した。


画像はリリースより

レムデシビルは新型コロナウイルス感染症()の治療薬として日本では2020年5月に特例承認された抗ウイルス薬。しかし、全世界においても使用経験が乏しいため、特に、腎機能障害などの併存疾患等を持つ患者での薬物動態に関する情報は不足している。医薬品添付文書では重度の腎機能障害患者には、投与は「推奨しない。治療上の有益性が危険性を上回ると判断された場合にのみ投与を考慮すること」と記載されている。実臨床では急性腎障害を生じている患者も多く、急性腎障害や末期腎不全の患者はCOVID-19の重症化リスクが高いという報告もある。そのため、レムデシビルを必要としている腎機能障害患者も多数いると考えられる。

京都大学医学部附属病院では、併存疾患を持つなど難しい新型コロナウイルス感染症患者の治療を行ってきた。その中で、レムデシビルを使用する患者も多くいた。そこで、助石有沙美薬剤師、米澤淳准教授、伊藤功朗准教授をはじめとする同院の研究チーム(薬剤部(薬学研究科)、呼吸器内科、集中治療部、腎臓内科、初期診療・救急科)は、島津製作所との共同研究で、腎障害などを有する患者において、レムデシビル活性代謝物の血中濃度を測定し、体内動態の個体間変動へ影響を与える因子の解明を試みた。

代謝物のクリアランスに影響を与える因子は「推定糸球体濾過量」

京都大学医学部附属病院でレムデシビルが投与された37人の患者の血液を採取し、レムデシビルの活性代謝物であるGS-441524の血中濃度を測定した。すると、腎機能障害患者では腎機能正常患者と比較してGS-441524の血中濃度が高いことがわかった。また、体外式膜型人工肺(ECMO)が挿入された患者では、より高用量のレムデシビルが必要かもしれないと考えられていたが、ECMOを挿入していない患者と同じ投与量でも血中濃度に差はない可能性が示唆された。

収集した血中濃度データから母集団薬物動態解析を行い、GS-441524のクリアランスに影響を与える因子として推定糸球体濾過量を同定した。さらに、推定糸球体濾過量からGS-441524の血中濃度を予測するモデルを確立した。高い血中濃度は副作用のリスクとなり得ることから、このモデルを用いてシミュレーションを行い、腎機能に応じた投与量設計法を提案した。

確立したモデルに基づく投与量設計により、より安全に投与できる可能性

医薬品添付文書では、重度の腎機能障害患者に対するレムデシビルの投与は治療上の有益性が危険性を上回る場合を除いて推奨されていないが、今回の研究で確立したモデルに基づく投与量設計により、レムデシビルを使用せざるを得ない重度の腎機能障害患者において、より安全にレムデシビルを投与できる可能性が示唆された。腎機能の指標である推定糸球体濾過量を組み込んだモデルの確立は世界で初めてであり、今後、腎機能障害など特殊な背景を持つ患者に対するレムデシビルの最適な個別化治療につながることが期待される。

なお、今回の研究結果を解釈する上で、現時点では注意すべきいくつかの点があると研究グループは述べている。具体的には、レムデシビルの他の代謝物や腎障害のリスクとなる添加剤の血中濃度を測定できていないこと、また、検討した症例数、特に重度腎機能障害患者やECMO挿入患者の数が少ないため、多数例でのさらなる検討が必要であることが挙げられている。

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