訓練への適応性により治療効果が変わるのがニューロフィードバック訓練の課題だった
広島大学は11月24日、訓練前に計測した安静時脳活動から、AI(機械学習)技術を用いて、ニューロフィードバック訓練の適合性に関連した脳情報を抽出して、ニューロフィードバック訓練の適合性を予測する手法を開発したと発表した。この研究は、同大脳・こころ・感性科学研究センターの高村真広客員講師、奈良先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科情報科学領域 数理情報学研究室の吉本潤一郎准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Neuroimage」に掲載されている。
画像はリリースより
ニューロフィードバックとは、ある人の脳活動を測定しながら当人にその脳活動の状態をリアルタイムで可視化することによって脳活動を特定の状態に導く、つまり「脳活動を制御する」技術のこと。薬物や刺激を用いず非侵襲的に脳の状態を変える可能性があることから、精神疾患の新しい治療法としても注目されている。例えば、疾患によってある脳部位の活動が低下している場合、その脳部位の活動を高めるニューロフィードバック訓練を行うことで、症状を改善できると考えられている。研究グループも過去に、うつ病で低下した前頭葉の活動を高めるニューロフィードバック訓練がうつ病患者の症状を改善させる効果を報告している。
しかし、ニューロフィードバック訓練は一種の学習訓練であることから、訓練に対する得手・不得手(訓練への適応性)に個人差があることが知られている。このニューロフィードバック訓練への適応性が治療効果を左右してしまう問題は、治療への実用化に向けた課題となっていた。
負荷の少ない検査で予測可能、テーラーメイド治療の実現につながる可能性
研究グループはこの問題を解決するため、簡便に測定できる安静時の脳fMRIデータから、その人がニューロフィードバック訓練にどの程度適しているのかをAI技術を用いて予測する方法を開発した。その結果、後部帯状回や後部島皮質を中心とした脳の機能的結合からニューロフィードバック訓練に上手く適応できるか否かを予測できることを発見。さらに、ニューロフィードバック訓練の標的脳部位によらず予測することに成功した。
今回の研究成果を応用することで、さまざまな特性をもつ患者群に対し、負荷の少ない検査で適切なニューロフィードバック治療を提供する「テーラーメイド治療」の実現につながると考えられる、と研究グループは述べている。
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・広島大学 研究成果