離島での医薬品提供体制は自然災害や医療者の人員不足など多くのリスクを抱えるのが現状。離島部を持つ津久見市は、今年度の地方分権改革でへき地の遠隔診療時における調剤制限緩和に関する提案を行い、12日に開催された地方分権改革有識者会議・提案募集検討専門部会合同会議で対応方針案が了承された。
看護師による調剤は薬剤師法で認められていないが、一定条件を満たせば看護師が患者に対し、医薬品を提供できるよう検討する。具体的には、医師等が映像を介して離島の診療所にいる看護師に指示を行い、患者に提供できる薬剤については、PTPシートで包装されたままの医薬品を想定。映像を介して、医薬品の種類や品名、個数など必要量を取り揃えて確認できる薬剤のみとしており、医薬品を直接計量、混合する行為など新たな調剤は考えていないという。
医師の指示による調剤であれば、処方箋に基づいて調剤した薬剤の品質等に影響がなく、安全性も担保されるとした。全国知事会も「提案団体の提案の実現に向けて、積極的な検討を求める」と要望した。
これに対し厚労省は10月の回答で、「離島部の診療所において医師が自己の処方箋により自ら調剤を行う必要があり、看護師が当該診療所で調剤を行うことができない」との見解を示した一方、「当該診療所に従事する医師がオンライン診療による処方箋に基づき、当該医師の責任の下、医療安全を確保しつつ適切に医薬品を提供することが可能かどうか、関係団体等の意見も踏まえながら整理したい」と柔軟に対応する考えを示していた。
日本薬剤師会は離島であっても薬剤師が常駐し、調剤を行うべきとの考え方を示しており、特例による対応で検討する。今後、看護師による医薬品の提供を可能とすることの考え方や条件などを詰める。
津久見市の離島部の診療所は、診療所の院長、看護師などが週4日本土から定期船で通い、島在住の看護師を含めた体制で診療を行っていた。昨年10月からは荒天等において、医師が渡島できない時の診療体制を確保するため、本土の津久見市内の病院からオンライン診療ができるよう、市が情報通信機器の整備を行い、診療所で運用を開始。
しかし、医師が本土の病院からオンライン診療を実施することになるため、診療所内に医師が不在となり、薬剤師も常駐しておらず、診療所内にある薬剤を患者に提供できない事例が発生していた。
厚労省は医師が不在の間、診療所に薬剤師を派遣することや薬剤師がオンライン服薬指導を行い、ドローンで離島に医薬品配送する対応策を提案。これに対し津久見市は、天候の急変などで「事前に本土から薬剤師を派遣することやドローンを活用した配送などでは解決は見込めない」と規制緩和を要望した。