不妊治療の保険適用をめぐっては、2020年の全世代型社会保障改革の方針に基づき、2021年度中に詳細を決定し、2022年度から保険適用を実施するとされている。医薬品等については、有効性・安全性等の確認、医薬品医療機器等法上の承認の可否などについて、薬事・食品衛生審議会や医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議で検討が行われ、有効性、安全性等の確認の結果、保険適用とならない医療技術等については、先進医療の実施等が検討されている。
日本産婦人科医会の谷川原真吾氏(スズキ記念病院)は、自由診療下の不妊治療で用いられる多くの薬剤は未承認や適応外である状況を踏まえ、「4月の診療報酬改定の時点で承認を得られなかった薬剤は使用できなくなる恐れがある」と懸念を示した。
これまでの治療が継続できなくなることに加え、「海外で用いられている新しい薬剤の導入が遅れることによる治療成績の停滞も今後危惧される」と述べ、迅速に薬事承認が得られる仕組みの構築を求めた。
製薬企業に対しては、「現場の声を聞いた上で、効能効果の追加申請を今後もお願いしたい」と要請し、日本産婦人科医会としても「必要な治験やデータの収集に全面的に協力していく」との意向も示した。
また、不妊治療の助成制度から保険適用に移行になることで、「不妊治療の制度が大幅に変更になるのでルールの変更点や運用上の注意点を国民や医療機関に丁寧に説明してほしい。移行期間には治療が中断しないよう何らかの救済措置を設ける必要がある」と要望した。
一方、患者団体のNPO法人「ファイン」は、「保険が適用され、今受けられている治療が受けられなくなると、妊娠が遠のいてしまう。現行の治療を維持し、患者の選択肢を減らさないでほしい」と訴えたほか、「自費治療になると経済的負担が大きくなってしまう。保険が適用されない部分については助成を残してほしい」と述べた。
■アロフィセル薬価562万円‐武田の痔瘻治療剤
また、この日の総会では、再生医療等製品で武田薬品の痔瘻治療剤「アロフィセル注」(一般名:ダルバドストロセル)を25日付で薬価基準に収載することを了承した。補正加算として10%の市場性加算Iが適用され、薬価は4瓶1組が562万0004円に設定。市場規模はピーク時の10年目に920人、販売額は52億円と予測している。
再生医療等製品を保険収載する場合、医薬品か医療機器のどちらで取り扱うかについて中医協が製品の特性に応じて判断しており、同剤は医薬品の例に倣って薬価収載される。
原価計算方式で算定され、製品総原価398万7442円、営業利益73万1424円、流通経費29万0050円、消費税を積み上げた。その上で、希少疾病用再生医療等製品に指定されているため、10%の市場性加算Iをつけた。
同剤は、健康成人の皮下脂肪組織由来の間葉系幹細胞から培養して得られ、増殖させた脂肪組織由来幹細胞を構成細胞とする再生医療等製品。非活動期または軽症の活動期クローン病患者における複雑痔瘻の治療に用いられ、9月に製造販売承認された。
10月の総会では、審査報告書で「医薬品と同様に薬理作用による治療効果を期待して肛門周囲複雑瘻孔の瘻管内壁に直接局所投与する再生医療等製品」と記載されているとして、厚生労働省が医薬品の例として対応することを提案。異議なく了承されていた。