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神戸市の小児気管支喘息、2020年緊急事態宣言の受診者数への影響を調査-神戸大ほか

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2021年11月16日 AM11:30

2011~2020年に神戸こども初期急病センター受診・気管支喘息診断の患者7,476人を調査

神戸大学は11月12日、2020年の緊急事態宣言が神戸市の小児の気管支喘息による受診者数におよぼした影響を調査した結果を発表した。この研究は、同大大学院医学研究科小児科学分野の山口宏特命助教と野津寛大教授、神戸こども初期急病センターの石田明人センター長らの研究グループによるもの。研究成果は、「International Journal of Environmental Research and Public Health」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより

気管支喘息の環境要因は多くの国で報告されており、感染症(ライノウイルス、、インフルエンザウイルスなど)、気象要因(気温、気圧、湿度など)、アレルゲン(花粉や黄砂)そして大気汚染物質(SO2、二酸化窒素(NO2)、PM2.5など)などがある。

一方、神戸市の小児における気管支喘息への環境要因の影響は不明で、気管支喘息患者数の季節や年による変化の報告もなかった。また、2020年の新型コロナウイルス感染症拡大により発令された緊急事態宣言が、神戸市の子どもたちの気管支喘息受診数にどのような影響を及ぼしたかも不明だった。

そこで今回の研究では、2011~2020年の間に気管支喘息で神戸こども初期急病センターを受診した16歳未満の全患者合計27万8,465人のうち、気管支喘息と診断された患者7,476人を調査。これは、単一施設の気管支喘息受診患者調査としては最大規模の患者数としている。

喘息で受診の患者数増加と平均気温上昇に有意な相関関係、小児全体で

まず、2011~2020年の気管支喘息患者数の推移調査では、気管支喘息患者数は、2011~2019年の間は明らかな春と秋のピークを認めたのに対して、2020年の緊急事態宣言下の春にはピークを認めず、解除された秋には2019年とほぼ同数の患者数のピークを認めた。

次に、2020年の気管支喘息患者数の変化の要因を調べるために、2011~2019年間に神戸市ではどのような環境要因が子どもたちの気管支喘息と関係があったのかを調査。その結果、小児全体では喘息で受診する患者数の増加と平均気温の上昇に有意な相関関係を認めた。

5歳以下の小児、大気中SO2濃度上昇と有意な相関関係

さらに、5歳以下の小児では大気中のSO2濃度上昇と有意な相関関係が示された。その他の天候や大気汚染物質、インフルエンザウイルスやRSウイルスなどの感染症の患者数、台風や黄砂、花粉などは相関関係を認めなかったとしている。

緊急事態宣言発令後、2020年神戸市の大気汚染物質は例年より明らかに少なくなり、SO2も有意に低下していた。2020年の春に喘息患者数のピークを認めなかったことは、SO2の低下や緊急事態宣言による社会的隔離による人的交流の減少、手洗いやマスクをつけることによる衛生環境の改善による影響と考えられ、2020年の秋のピークの再現は子どもたちの交流増加による感染症の罹患や、社会活動の増加に伴う環境汚染物質の増加、およびそれらへの暴露機会の増加の可能性が考えられる。

既往のある子ども、マスクや手洗いうがいなども予防に重要

気管支喘息は、寒い日や台風の前後に多いなどと言われることがある。今回の研究により、神戸市の気管支喘息では、むしろ気温が高い日に起きやすく、特に就学前の子どもたちは大気汚染物質のうちSO2が気管支喘息に影響することがわかった。気管支喘息発作は春と秋に多いため、気温の高い日に長い外出を控えたり、工場や車などの排気ガスが多い場所はなるべく避けたりすることが予防になる可能性がある。

また、緊急事態宣言解除後の人的交流・社会活動の増加が、気管支喘息患者数の増加に関係しており、喘息の既往のある子どもは、マスクや手洗いうがいなどの良好な衛生環境も、予防に重要であると考えられる、と研究グループは述べている。

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