政府は10日、米メルクが開発中の新型コロナウイルス感染症経口治療薬「モルヌピラビル」について、承認後に160万回分の供給を受けることでMSDと合意したと発表した。年内に同社が20万回分を政府に納入するなど、段階的に供給する予定。岸田文雄首相は同日の記者会見で、承認された場合は医療現場に速やかに提供する方針を示していた。
MSDは、年内に20万回分、2022年2月と3月に各20万回分を政府に納入する。また、追加の100万回分も確保したとしている。政府は供給の対価として、約12億ドル(約1370億円)を支払う。
同日に発足した第2次岸田内閣の初閣議後、後藤茂之厚生労働相は、160万回分とした背景について「可能な限り使用できそうな治療薬をなるべく多く確保しようという考えだ」と記者団に説明した。
モルヌピラビルは、軽症から中等症の新型コロナウイルス感染症患者を対象とする経口治療薬で、新型コロナウイルスの複製を阻害する作用を持つ。承認された場合の推奨用量として、800mgを1日2回、5日間服用することとしている。
感染が確認され、重症化リスク因子を一つ以上持つ入院していない成人患者を対象に有効性と安全性を評価した「第III相MOVe-OUT試験」の中間解析では、入院または死亡のリスクを大幅に低減したとの結果が示されている。
英国では、検査で陽性と診断され、重症化リスク因子を一つ以上持つ軽症から中等症の成人患者向けの治療薬として承認されている。また、米国食品医薬品局(FDA)、欧州医薬品庁(EMA)で審査、事前評価が進められている。
既に厚労省は、モルヌピラビルが承認申請された場合、速やかな実用化に向け、医薬品医療機器総合機構(PMDA)で優先かつ迅速に審査するとの方針を示している。
後藤氏は、「経口治療薬が出れば在宅でも服用できるため、国民の健康と命を守ることに大きな効果があると考えている。引き続き、必要な対応を進めたい」との考えを示した。