医療従事者の新型コロナワクチン接種6か月後の抗体価と細胞性免疫を調査
横浜市立大学は11月5日、ファイザー社の新型コロナウイルスのワクチンを接種した医療従事者98人の血液を採取し、ワクチン接種6か月後の抗体価と細胞性免疫を調べたと発表した。この研究は、同大附属病院感染制御部の加藤英明部長、同大大学院医学研究科微生物学の梁明秀教授、宮川敬准教授、同大大学院データサイエンス研究科の後藤温教授、同大大学院医学研究科血液・免疫・感染症内科学の中島秀明教授、東ソー株式会社らの共同研究グループによるもの。研究成果は、プレプリントサーバー「MedRxiv」に公開されている。
画像はリリースより
新型コロナウイルス感染症の世界的流行に対する打開策として、全国的にワクチン接種が進められている。ファイザー社やモデルナ社製のワクチンを接種すると、ウイルスのスパイクタンパク質に対する抗体が産生されるほか(液性免疫)、抗ウイルス活性をもつ免疫細胞が誘導され(細胞性免疫)、これらの相乗効果によってウイルス感染そのものや重症化が顕著に抑制されることが知られている。しかし、これらの免疫の長期持続性について、日本人ワクチン接種者における報告は限られていた。
接種6か月後の抗体価は約90%減少、中和抗体価は約80%減少、中和抗体陽性率85.7%
今回研究グループは、研究参加に同意を得た医療従事者から、2回目のワクチン接種1週間後、3週間後、6か月後に採血を行い、それぞれ86、87、98人のサンプルを解析した。ウイルスに対する抗体価(SP IgG)は、AIA-CL用SARS-CoV-2-SP-IgG抗体試薬(東ソー株式会社)を、中和抗体価(NT50)はウイルスのスパイクをもつシュードウイルスを用いて、それぞれ定量的に測定した。
SP IgGは接種3週間後の平均値97.0に対して、6か月後には6.8となり、約90%減少していた。また、飲酒習慣がある人や年齢が高い人ほど、6か月後時点のSP IgGが低い傾向にあることが明らかになった。6か月後の時点で中和抗体が検出された人は98人のうち84人(中和抗体陽性率85.7%)だったが、中和活性の指標となるNT50は接種3週間後の平均値680.4に対して、6か月後には130.4となり、約80%減少していた。ワクチン接種後のブレイクスルー感染者では、抗体価、中和抗体価ともに非感染者と比較して高く保持されていたという。
接種6か月後で多くの人に細胞性免疫反応を確認、細胞性免疫と抗体価との間に弱い相関
さらに、6か月後の採血時に血液から末梢血単核球(PBMC)を分離し、T-SPOT Discovery SARS-CoV-2(Oxford Immunotec社)を用いて、スパイク抗原特異的にインターフェロンγを産生する細胞数、つまり細胞性免疫応答の強さを測定した。その結果、ウイルス抗原特異的に反応する細胞数は、全被験者の中央値として106 PBMCあたり84(範囲0〜700)だった。細胞性免疫応答の強さは、年齢、性別、飲酒、喫煙の有無とは相関しなかった。また、抗体価と細胞性免疫との間には弱い相関が認められたとしている。
以上の結果から、ワクチン接種6か月後において、抗体価はほとんどのワクチン接種者で陽性であったものの、ピーク時と比較して顕著な減少傾向を示すことが明らかとなった。また、細胞性免疫はワクチン接種6か月後の1時点のみの測定で、経時的な評価は行えていないが、新型コロナウイルスワクチンによる宿主免疫応答の1つとして細胞性免疫が誘導され、6か月程度は維持されることが示唆される結果だったという。
今回の研究は、98例と少ないサンプル数ではあるが、ワクチン接種6か月後の免疫状況の一端が明らかになった。現在、3回目のブースター接種が検討されているが、研究グループでは今後もワクチンの効果について調査、公表する予定だとしている。
▼関連リンク
・横浜市立大学 先端医科学研究センター 研究成果