■九州エリアを舞台に
公正取引委員会は9日、国立病院機構の医療用医薬品入札に関して独占禁止法の疑いがあるとして、九州エリアの医薬品卸に対して立入検査を行った。立入検査を受けたのは、メディパルホールディングスのアトル、アルフレッサホールディングスのアルフレッサの福岡第一支店、スズケングループの翔薬、東邦ホールディングスの九州東邦、フォレストホールディングスのアステム、富田薬品の6社。各社は立入検査の事実を認め、今回の事態を厳粛かつ真摯に受け止め、公取委の検査へ全面協力することを表明した。
9日は、国立病院機構が医薬品共同入札(競争入札)を公告した当日だった。今回の独禁法違反疑惑は、国立病院機構、労働者健康安全機構が運営する九州エリアの病院が調達する医療用医薬品の入札(国立病院機構本部発注者)に関するもの。
大手医薬品卸4社(メディセオ、アルフレッサ、スズケン、東邦薬品)は、2019年11月27日に地域医療機能推進機構(JCHO)が発注した医薬品入札における独占禁止法違反容疑で、公取委の強制調査を受けた過去がある。
同事件はその後、20年10月13日に公取委と東京地検特捜部の合同捜査を受けた後、12月9日に公取委の告発によって、東京地方検察庁が独禁法による課徴金減免制度(リニエンシー)の対象となったメディセオを除く、アルフレッサ、スズケン、東邦薬品の3社を起訴し、3社の関係者7人を在宅起訴した。
2021年4月27、28日と5月10日に東京地方裁判所で公判が行われ、被告のスズケン、東邦薬品、アルフレッサの3社と関係者7人は起訴内容を認め、検察側は企業に罰金3億円、当該者に懲役2年等を求刑した。東京地裁は6月30日、3社に罰金刑2億5000万円と当該社員に執行猶予付きの懲役刑判決を下している経緯がある。
今回の公取委による立入検査は、大手卸4グループの九州エリア子会社・支店に加え、九州の有力卸であるアステムと富田薬品が含まれており、今後、事態の推移が注目される。