デンカは8日、新型コロナウイルス抗原迅速診断キット「クイックナビ-COVID19Ag」について、計13万箱の自主回収を開始した。一部使用部材の不良により、製造後時間の経過と共に偽陽性率が高まる可能性があるため。重篤な健康被害が発生する恐れはないとしている。
回収対象は、2021年12月に使用期限を迎える同製品のうち、同社が製造販売する製造番号「0760121」「0790121」「0800121」「0820121」「0830121」「0840121」「0850121」の7万8000箱のほか、販売提携している大塚製薬が販売する「0750121」「0770121」「0780121」「0810121」の5万2000箱。
同製品は、鼻咽頭ぬぐい液または鼻腔ぬぐい液中における新型コロナウイルスの抗原の有無を約15分で診断でき、2020年8月に体外診断用医薬品として製造販売承認されている。
ただ、製造後時間の経過と共に偽陽性率が高まる可能性があるとして、自主回収が必要と判断した。
厚生労働省医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課は、「科学的、技術的要因は調査中だが、判定シートの部材に関連があると推定している」との見方を示した。
これら製品は、8月中旬~9月中旬に医療機関や高齢者施設等に販売されたが、8月頃から偽陽性に関する苦情が数十件同社に寄せられ、先月から件数が急増していた。
回収対象製品を使用した場合、偽陽性の可能性があるために安全性と有効性への影響は否定できないとする一方、疾病診断は他の検査結果や臨床症状を勘案して総合的に行うとして、「重篤な健康被害は発生しない」との見解を示した。実際に、現時点で健康被害は報告されていない。
自主回収の実施を受け、デンカは「本品を使用いただいている皆様に心配と迷惑をおかけすることをお詫び申し上げる。品質管理を徹底し、再発防止に向けて万全を期す」とコメントした。