脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血患者の腸内細菌の特徴は不明だった
大阪大学は11月8日、脳動脈瘤の破裂によるくも膜下出血を発症した患者の腸内細菌叢を調査し、その特徴を明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科の高垣匡寿助教、大学院生の川端修平氏、貴島晴彦教授(脳神経外科学)らの研究グループによるもの。研究成果は、「Stroke」にオンライン掲載されている。
画像はリリースより
これまでに腸内細菌叢は全身のいろいろな疾患と関係していることが知られており、さまざまな脳神経疾患との関係も報告されていた。また、脳血管の病気である脳動脈瘤に関しても、少数だが腸内細菌叢と関係していると報告されている。しかし、これまでは動物実験や未破裂脳動脈瘤患者を対象とした研究報告しかなく、脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血患者の腸内細菌を調べ、その特徴を報告したものはなかった。
くも膜下出血患者の腸内に多いCampylobacter属の中でも特にC. ureolyticusの検出率「高」
研究グループは今回、腸内細菌叢を調べる方法として代表的な「16S rRNA解析」を用いて、くも膜下出血患者と未破裂脳動脈瘤患者の腸内細菌叢を比較した。その結果、くも膜下出血患者に特徴的ないくつかの細菌株を同定した。
さらに、他の疾患を対象とした研究では検出されていないCampylobacter属に注目し、種特異的なPCR法を用いてより正確な検査を実施。その結果、Campylobacter属がくも膜下出血患者に多く検出されることが確認された。また、その中でもC. ureolyticusの検出率が高いことが明らかになった。
脳動脈瘤破裂を腸内細菌叢の操作で予防する新規治療法につながる可能性
今回の研究成果により、従来では年齢や性別、動脈瘤の大きさなどでしか予測し得なかった未破裂脳動脈瘤の破裂率に腸内細菌叢という新しい因子を加えることで、より高い精度で破裂予測ができるようになることが期待される。
「これまでは外科的治療しか効果的な破裂予防ができなかった未破裂脳動脈瘤に対して、腸内細菌叢を操作し破裂予防を行うという新しい治療法につながるものと考えている」と、研究グループは述べている。
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・大阪大学 ResOU