感性や印象だけでは評価しにくいリラックス状況、脳波測定によって定量的に解明へ
千葉大学は11月9日、脳波測定実験によって、化学物質濃度が極めて低い室内環境では休息時のリラックス状態を向上させる効果があることを実証したと発表した。この研究は、同大予防医学センターの中山誠健特任准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「International Journal of Environmental Research and Public Health」に掲載されている。
画像はリリースより
室内の化学物質濃度を低減させることは、シックハウス症候群の発症を予防する方法の一つであることが報告されている。一方で、化学物質濃度を低減させたことによる空気環境の向上が、生活者の日常的な作業効率や休息に与える影響など、健康維持や増進効果について調査・報告する研究はなかった。
今回、研究グループは、住環境の空気環境を改善することが、化学物質に敏感で悩みを持つ人々だけでなく、一般的な人々の健康にも重要であることを把握するために、住環境の向上と健康の関係を調査する必要があると考えた。そこで今回の研究では、感性や印象だけでは評価しにくいリラックス状況を脳波測定によって定量的に解明することを目的とした。
さまざまな年齢や性別の169人を対象に、90分間の滞在実験
内外装の見た目や環境が同等で化学物質濃度だけが異なる2棟の実験住宅棟で、さまざまな年齢や性別の計169人を対象とした90分間の滞在実験を実施した。部屋には被験者のみで、快適に過ごせる実験環境下で実施。滞在中には、20分間の作業(計算や暗記課題)と10分間の休息(目を閉じて安静にする)時間を設けて、脳波を測定した。その他の60分間は、自由にくつろいでもらいながら、臭気の強さや好み、空気環境に対する印象や快適性などのアンケートに回答してもらった。
なお、被験者には環境の違いを知らせずに行う「ブラインドテスト」で実施し、事前に年齢や性別、体温、血圧、アレルギー反応、ストレス状況なども測定・調査。休息時のリラックス状況は、個人差や多様な環境条件を考慮して解析した。
リラックス状態を示すα波、一般的な住環境に比べ、低濃度空間では1.6倍多い
その結果、「室内のにおい」について、化学物質濃度が極めて低いと「においが気にならない」と85.9%の人が評価。その割合は、一般的な住環境に比べて1.7倍多かった。
「空気環境の満足度」については、化学物質濃度が極めて低いと「空気環境が満足である」と73.2%の人が評価。その割合は、一般的な住環境に比べて1.4倍多かったという。
「リラックス快適性」については、化学物質濃度が極めて低いと「リラックスでき快適」と76.0%の人が評価。その割合は、一般的な住環境に比べて1.2倍多かった。
作業後の休息時には、リラックス状態を示す脳波α波が増加する。その割合は、一般的な住環境に比べて化学物質低濃度空間では1.6倍多かったという。
メンタルヘルスの観点からも、調査・分析を続けていく予定
昨今の感染症の影響もあり、多様な働き方や生活スタイルの変化によって、住環境のあり方が変わってきている。
住環境の空気環境と健康の関係について、身体的な影響だけでなく精神的な影響(メンタルヘルス)の観点から、継続的な調査・分析を続けていく予定だ、と研究グループは述べている。
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