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新型コロナワクチン、デルタ株流行期における有効性評価の暫定結果を公表-感染研

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2021年11月10日 PM12:15

症例対照研究の暫定報告(第二報)として「」流行期の8月における有効性を検討

(感染研)は11月9日、新型コロナワクチンの有効性を検討した症例対照研究の暫定報告(第二報)を発表した。この報告は、感染研感染症疫学センターの新城雄士氏、有馬雄三氏、鈴木基氏、クリニックフォア田町の村丘寛和氏、KARADA内科クリニックの佐藤昭裕氏、公立昭和病院の大場邦弘氏、聖路加国際病院の上原由紀氏、有岡宏子氏、複十字病院の野内英樹氏、国際医療福祉大学成田病院の加藤康幸氏、新宿ホームクリニックの名倉義人氏、埼玉医科大学総合医療センターの岡秀昭氏、西田裕介氏、埼玉石心会病院の石井耕士氏、大木孝夫氏、日本赤十字社医療センターの上田晃弘氏、横浜市立大学付属病院の加藤英明氏らによるもの。


画像は感染研サイトより

新型コロナウイルス感染症のワクチン開発は未曾有のスピードで進み、ファイザー社製およびモデルナ社製のmRNAワクチンは大規模なランダム化比較試験で有効性(vaccine efficacy)が90%以上とされ、アストラゼネカ社製のウイルスベクターワクチン1種類も有効性が70%程度とされた。国内外で緊急使用許可や製造販売承認を受け、実社会におけるワクチン導入初期の有効性(vaccine effectiveness)も海外で評価されており、ランダム化比較試験と同等の有効性を認めた。

国内においても、感染研にて、複数の医療機関の協力のもとで、発熱外来等で新型コロナウイルスの検査を受ける者を対象として、(test-negative design)を実施しており、この暫定報告の第一報では、国内においても高い有効性が示された。しかし、前回報告では、B.1.1.7系統(アルファ株)からB.1.617.2系統(デルタ株)の置き換わり期であったため、デルタ株に対する有効性についてはさらなる検討が必要だった。そこで今回、関東において月初めにはデルタ株が9割以上を占め、月末にはほぼ全ての検出株がデルタ株であった8月の調査における暫定結果が報告された。

関東7医療機関の発熱外来等受診者対象、アンケートで接種歴をカテゴリー分け

2021年8月1日~31日までに関東の7か所の医療機関の発熱外来等を受診した成人を対象に、検査前に基本属性、新型コロナワクチン接種歴などを含むアンケートを実施。除外基準である未成年者、意識障害のある者、日本語でのアンケートに回答できない者、直ちに治療が必要な者、同アンケート調査に参加したことのある者には、調査参加の打診は行われなかった。のちに各医療機関で新型コロナウイルス感染症の診断目的に実施している核酸検査(PCR)の検査結果が判明した際に、検査陽性者を症例群(ケース)、検査陰性者を対照群(コントロール)と分類。発症から14日以内で、37.5℃以上の発熱、全身倦怠感、寒気、関節痛、頭痛、鼻汁、咳嗽、咽頭痛、呼吸困難感、嘔気・下痢・腹痛、嗅覚味覚障害のいずれか1症状のある者に限定して解析が行われた。

ワクチン接種歴については、未接種、1回接種のみ、2回接種の3つのカテゴリーに分類。また接種後の期間を考慮するため、未接種、1回接種後13日目まで、1回接種後14日から2回接種後13日目まで(partially vaccinated)、2回接種後14日以降(fully vaccinated)の4つのカテゴリーにも分類した。ロジスティック回帰モデルを用いてオッズ比と95%信頼区間(CI)を算出し、ワクチン有効率は(1-オッズ比)×100%で推定した。多変量解析における調整変数としては、先行研究等を参照し、年齢、性別、基礎疾患の有無、医療機関、カレンダー週、濃厚接触歴の有無、過去1ヶ月の新型コロナウイルス検査の有無をモデルに組み込んだ。ワクチン有効率においては、多変量解析から得られた調整オッズ比を使用した。ワクチン接種歴等について、欠損値のある者は今回の解析では除外したが、ワクチン接種歴の欠損を未接種として感度分析も行った。

解析対象は1,353人、検査陽性47.0%、ワクチン未接種64.9%

関東の7医療機関(うち6医療機関は東京都)において、発熱外来等を受診した成人1,867人が同調査への協力に同意した。うち、発症日不明および発症から15日以降に受診した78人、症状のなかった436人を除外して解析が行われた。

解析に含まれた1,353人(うち陽性636人(47.0%))の基本特性は、年齢中央値(範囲)34(20-93)歳、男性658人(48.6%)、女性695人(51.4%)であり、何らかの基礎疾患を346人(25.6%)で有していた。また、ワクチン接種歴は、未接種者858人(64.9%)、1回接種した者212人(16.0%)、2回接種した者252人(19.1%)だった(欠損31人を除く)。なお、ワクチン接種歴のある464人中、回答のなかった20人を除いて185人(41.7%)がワクチン接種記録書等の原本や写真等を携帯しており、259人(58.3%)はカレンダーや手帳を見ながらアンケートに回答した。

暫定ワクチン有効率は、部分免疫で84%、フル免疫で87%

ワクチン接種歴を接種回数別で3つのカテゴリーに分け、検査陽性者(症例群)と検査陰性者(対照群)とで比較した。未接種者を参照項とする調整オッズ比は、1回接種者では0.47 (0.34-0.66)、2回接種者では0.13 (0.09-0.20)だった。次に接種後の期間ごとに検討したところ、1回接種13日目までの調整オッズ比は1.06 (0.69-1.63)、1回接種14日以降2回接種13日まで(partially vaccinated)およびワクチン2回接種14日以降(fully vaccinated)では、それぞれ0.16 (0.10-0.24)、0.13 (0.08-0.21)だった。ワクチン接種歴不明例・接種日不明例は主解析では対象から除外したが、未接種として解析に含めた場合でも調整オッズ比は同様だった。

調整オッズ比を元にワクチン有効率を算出したところ、1回接種14日以降2回接種13日まで(partially vaccinated)では84%(95%CI 76-90%)、2回接種では87%(95%CI 80-91%)、ワクチン2回接種14日以降(fully vaccinated)では87%(95%CI 79-92%)だった。

デルタ株に対しても既存ワクチンは有効性高く、1回より2回接種がより有効

今回の報告では2021年8月のデルタ株流行期におけるワクチンの有効性が検討された。前回(アルファ株からデルタ株の置き換わり期)の報告と同様に、デルタ株流行期における「現時点で承認されているワクチン」の新型コロナウイルス感染症の発症に対する高い有効性が示され、デルタ株に対しても極めて有効であることが示唆された。また、前回同様、1回接種13日目までは有効性が認められず、それ以降では、接種回数・(短期的には)接種からの期間が長くなるにつれて有効率が高くなる傾向が見られた。

諸外国の報告としては、米国からの報告では、ファイザー社製の新型コロナワクチン(BNT162b2)2回接種7日後から1か月間のデルタ株による感染に対する有効率は93%(95% CI 85-97%)、英国からの報告では、接種間隔が最大12週間とわが国とは異なるものの、BNT162b2を2回接種後の有効率は88.0%(95%CI 85.3-90.1%)であり、同等の結果となっている。なお、「諸外国や今回の報告の通り、新型コロナワクチンの有効性は100%ではない、つまりブレイクスルー感染は起こりうるため、適切な感染対策を継続することが重要である」と、研究グループは指摘している。

免疫減衰や感染対策の緩和の影響等をみつつ長期的な調査継続が重要

今回の調査および報告においては少なくとも以下の制限がある。まず、交絡因子、思い出しバイアス、誤分類等の観察研究の通常のバイアスの影響を否定できない。特にワクチン接種歴については、ワクチン接種記録書等の原本や写真を携帯している者は4割程度であり、カレンダーや手帳をみながら回答する者が多かった。2つ目の制限として、ワクチン接種歴等について欠損値のある者は解析から除外している。ただ、ワクチン接種歴の欠損を未接種として解析に含めた場合でもオッズ比は同様であった。3つ目の制限として、今回の調査はアンケートに回答可能な軽症例を対象としており、無症状病原体保有者・中等症例・重症例・死亡例における有効性を評価しておらず、ワクチンの種類ごとの有効性は評価していない。4つ目の制限として、今回の研究では陽性例についてウイルスゲノム解析を実施していない。ただし、デルタ株流行期における解析であり大部分はデルタ株への感染であったとの想定のもとで実施している。最後に、今回の報告で示されたのは、あくまでも迅速な情報提供を目的として暫定的に解析を行った結果として得られた短期的な有効性であり、免疫の減衰を示す海外の報告も複数ある。今後もより詳細な解析を適宜行い、免疫減衰や感染対策の緩和の影響等をみつつ、中長期的な有効性を評価していくために、今後調査を継続していくことが重要である。

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