2011~2019年までに神戸こども初期急病センター受診の水痘患者3,092人を調査
神戸大学は11月8日、水痘と診断された患者3,092人の解析から、水痘ワクチン定期接種化による水痘患者数の減少効果を明らかにし、それに伴う医療費の減少効果も同時に明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科小児科学分野の山口宏特命助教と野津寛大教授、神戸こども初期急病センターの石田明人センター長らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Infection and Chemotherapy」にオンライン掲載されている。
画像はリリースより
世界初の水痘ワクチン株である水痘ワクチン岡株は、1974年に日本で開発された。それにも関わらず、2014年10月まで小児に対する水痘ワクチンの接種は定期ではなく任意だった。水痘ワクチン定期接種化以前の接種率は40%程度で、多くの水痘患者が発生していた。水痘ワクチン定期接種開始後、日本を含めた多くの国で水痘患者の発生率や水痘に関係して亡くなる患者数が劇的に減少したと報告されている。しかし、水痘ワクチンの定期接種化による1次救急センターの水痘患者数や直接費用への影響を調査した研究はなかった。
そこで研究グループは、水痘ワクチン定期接種化による神戸市こども初期急病センターの水痘患者数と受診に掛かる費用の減少効果を調べることを目的に、臨床データベースを利用して2011~2019年までに神戸こども初期急病センターを受診した全患者合計26万5,191人の中から水痘と診断された患者3,092人を調査。これは、単一施設の水痘受診患者数調査としては、これまでで最多の患者数だという。
水痘の受診患者、約6割がワクチン未接種者
水痘の患者数について、2014年10月の定期接種化以前は年間約500人だったが、2015年から減少し2019年には約200人だったと判明。水痘の患者数は予防接種対象年齢外の0歳児でも、減少した。
また、今回の研究では、水痘ワクチン定期接種が行われなかった世代の水痘患者数の増加も明らかになった。水痘で受診する患者のうち、約6割が水痘ワクチン未接種者だったという。
水痘ワクチン定期接種化後の患者数減により、受診による医療費が年間約400万円減
経済効果については、水痘ワクチン定期接種化後、その水痘患者数の減少により、受診による直接的な医療費が年間約400万円減少したことがわかったとしている。
水痘ワクチン定期接種を受けていない世代へ、費用補助などを
今回の研究により、水痘ワクチン定期接種化による1次急病センターを受診する水痘患者数を大幅に減少させる効果、その経済効果が明らかになった。
一方、水痘患者では、水痘ワクチン未接種者の割合が多く、さらに、水痘ワクチン定期化以前の世代の患者数の増加を認めることがわかった。そのため、水痘ワクチン接種の重要性の啓発や定期接種を受けられていない世代への接種の推奨と費用の補助などが必要であると考えられる、と研究グループは述べている。
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