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【調査】eコンセント普及に遅れ-国内治験導入わずか15%

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2021年11月08日 AM10:45

治験に参加する被験者への説明や同意を電子的に取得する「」を導入した製薬企業がわずか15%にとどまることが日本製薬工業協会医薬品評価委員会が実施した調査で明らかになった。導入実績があるのは全て外資系企業で、内資系企業で普及が進んでいない。国内での導入実績の少なさやシステム導入にかかる時間・費用などが普及を妨げているほか、医療機関側からも紙原本の説明文書・同意文書に比べた場合のeコンセントのメリットが理解されていない現状があるようだ。

通常、被験者が治験に参加する場合、医師や治験コーディネーター()が紙の治験説明文書を用いて口頭で説明し、被験者が納得すれば同意文書に署名し、参加する流れになる。新型コロナウイルス感染防止に伴い、被験者が来院しない非接触型での実施が可能な分散型治験が試行的に導入される中、動画コンテンツの視聴を通じて治験の理解向上につなげる電子説明文書、遠隔からでも被験者からの同意取得が可能な電子同意文書を活用する機運が高まっている。

製薬協は5月に、eコンセントの普及状況や課題把握のため会員企業を対象とした調査を実施し、外資14社、内資39社の計53社から回答を得た。先月からオンデマンド配信を開始した「第21回CRCと臨床試験のあり方を考える会議」で調査結果を発表した。

それによると、eコンセント導入実績があったのは8社のみで、45社は導入経験がなかった。導入したのは全て外資で半数以上の企業が導入していた一方、内資の導入企業は1社もなかった。

導入試験数は全体で16試験となり、各社の導入状況は「3試験」が3社、「2試験」が2社、「1試験」が3社だった。16試験中15試験が国際共同治験で、開発相で見ると第III相が10試験と最も多く、疾患領域では癌領域の治験が目立った。

導入した理由については、「被験者の理解向上」が最多で、被験者の同意取得率向上や治験期間中の参加中止など脱落率低下を大きな狙いとしていた。説明文書と同意文書を共にeコンセントとしたのは3試験にとどまり、説明文書の一部をビデオコンテンツで提供し、説明文書と同意文書は紙原本を用いるなどハイブリッドによる導入が多かった。対面で実施されるケースが多く、eコンセントの有用性を検証するパイロット的な導入にとどまっているようだ。

医療機関からeコンセントを受け入れられなかったケースを聞いたところ、eコンセントを導入した全試験で「あり」と回答した。主な理由は「同意取得時の業務負担が増えるため」が最多で、「対面での口頭説明の方がきちんと患者に伝わるため」「導入事例が少ないため」が続いた。

一方、未導入企業45社に導入していない理由を複数回答で聞いたところ、「導入事例が国内で少ないため」が27社、「システム導入に時間がかかるため」が16社、「社内の優先順位、予算を確保できないため」が16社、「eコンセント導入に関わる費用が高いため」が11社となった。

ただ、未導入企業の95%はeコンセントの普及や導入促進に関心があると回答しており、医療機関側にeコンセントの導入メリットを訴求していくことや、システム導入にかかる企業や医療機関の負担軽減が今後の普及に向けたカギとなりそうだ。

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