咳の発生を予測できればアウトブレイクの可能性がある感染症への対策が可能
東北大学は11月1日、Covid-19等の新興呼吸器感染症において、最重要な感染経路になる「飛沫感染」に注目し、「咳の発生」を体表面三次元映像から「診断」し、「予測」し得るシステムを発明して特許出願したことを発表した。この研究は、同大加齢医学研究所の白石泰之准教授、山家智之教授、大学院工学研究科・医工学研究科の杉田典大准教授、吉澤誠教授らの研究グループによるもの。なお、同発明成果はデータ解析結果を添付して特許出願し(特願2021-045978)、同日にメキシコのグアダラハラでオンライン開催された国際医用生体工学会議(IEEE EMBC)で公開・発表された。
画像はリリースより
Sars-Cov2等に起因する新興呼吸器感染症における主たる感染経路は、咳による飛沫感染と考えられている。咳による感染を診断し、その発生を予測できれば、Covid-19による呼吸器感染だけでなく、これからアウトブレイクする可能性のある新興呼吸器感染症に対する対策もできる可能性がある。
現在、多くの病院・診療所・介護施設などは、新型コロナウイルスに対応しているが、呼吸器科、感染症科、救急科以外の、本来は新型コロナウイルス感染症の専門ではない診療科でも、後で患者が感染者や濃厚接触者であることが判明するという事象が多く、事後対応に追われる局面も増えている。
アウトブレイク当初には、日常の診療では飛沫感染対策が準備されていなかった医療・介護現場も多かったが、もし、咳の発生を予測・検知し対策を取ることができていれば、基本的に感染予防着などで対策が取られていない全ての医療・看護・介護・ヘルスケアの現場に非常に有用だったと考えられる。また、医療介護以外の現場、教育や飲食現場などへの展開も期待できる。
呼気相をAI解析、人体の三次元表面再構成などから咳の発生を予測
ヒトは咳をする時に必ず一旦空気を吸い込む「吸気相」が存在する。同発明においては、体表面映像を用い、呼気相の時系列をAI解析することで、本来は二次元情報しかなかった映像からでも、人体の三次元表面再構成とモーション解析が可能となり、AIによる咳の定量診断および発生予測が可能となった。
現在は、同大流体科学研究所の安西眸助教と太田信教授が、飛沫の流体シミュレーション研究を、進めている。同研究所は、日本で唯一「流体」名を冠する国立大学附置研究所で、スーパーコンピュータによるシミュレーションも可能であり、さらに精度の高い計算を進めていく予定だという。
将来的に、咳による飛沫感染のアクティブブロックシステム開発の可能性も
また、シミュレーションの結果から、飛沫感染の伝播の速度や分布、飛沫感染ブロックの方法論も、予測に基づく設計が可能な理論だとしている。今後、咳の発生を予測し、飛沫感染伝播経路を予測できれば、咳による飛沫感染のアクティブブロックシステム開発の可能性も考えられる。
「本発明の研究成果により、病院診療所などにおける予測できないクラスター発生の可能性を大きく減らすだけでなく、教育現場、飲食店、交通機関、夜の街などへも、さまざまな応用、産業化への可能性が期待される」と、研究グループは述べている。
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