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妊婦が十分に魚を食べることで、新生児1歳時点の睡眠不足「減」の可能性-富山大

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2021年11月02日 AM11:15

妊婦の魚/n-3 PUFA摂取と子の睡眠時間との関連を、エコチル調査データで大規模検証

富山大学は10月28日、妊婦が魚およびn-3系多価不飽和脂肪酸(n-3 PUFA)を十分に摂取すると、生まれた子どもの1歳時点の睡眠時間が11時間未満となるリスクが低くなるという調査結果を発表した。この研究は、同大学術研究部医学系公衆衛生学講座の杉森成実研究生らの研究グループによるもの。研究成果は、「European Journal of Nutrition」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより

ヒトは通常、毎日決まった時間に起床・就寝し、おおむね一定のリズムで生活する。この一定のリズム(概日リズム)は、一人ひとりのからだに備わっている機能であり、体内時計とも呼ばれているが、光を浴びる時間帯や食事などの影響を受けて乱れることが知られている。幼少期の睡眠不足は、からだの発達、とくに肥満と関係することが知られており、子どもの概日リズムがどのようなことに影響を受けるか、さまざまな角度から研究する必要がある。

n-3 PUFAはヒトの健康維持に欠かせない栄養素の一種で、よく知られるものでは、植物油に多く含まれるα-リノレン酸(ALA)や、魚介類に多く含まれるエイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサペンタエン酸(DPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)などがある。これらのn-3 PUFAは人間の中枢神経系に高濃度に存在し、その構造と機能を維持するために重要な働きをする。しかし、体内で新しく作り出すことはできないため、食品から摂取する必要がある。特に、胎児の中枢神経系の発達には、胎盤を介して胎児に移行するn-3 PUFAが必要不可欠となる。睡眠リズムはこの中枢神経系によって制御されており、妊婦の食事内容(n-3 PUFAを含む魚の摂取)が胎児の中枢神経系の発達に影響を及ぼし、出生後の睡眠時間にも影響を与える可能性がある。

実際、先行研究により、魚およびn-3 PUFA摂取が中枢神経系の発達と機能維持に有益であり、睡眠に良い影響を与える可能性が報告されてきた。しかし、調査対象が小規模であることがほとんどだった。

そこで今回の研究では「子どもの健康と環境に関する全国調査()」から得られた約8.7万人の大規模データを用いて、妊婦の魚およびn-3 PUFA摂取と生まれた子どもの1歳時点の睡眠時間との関連を調べた。

魚/n-3 PUFAを多く摂取のグループ、新生児1歳時点の睡眠時間11時間未満の割合「少」

今回、質問票調査によって得られた8万7,337人分のデータを基に、妊婦の魚およびn-3 PUFAの摂取量と生まれた子どもの1歳時点の睡眠時間が11時間未満となる割合との関連を調べた。食事摂取頻度調査票の魚介類に関する21項目の回答から、妊婦の1日あたりの魚摂取量を計算。さらに、得られた1日あたりの魚摂取量から、日本の食品の脂肪酸組成表を使用し、1日あたりのn-3 PUFAの摂取量も算出した。また、生まれた子どもの1歳時点の睡眠時間については質問票にて情報収集を行い、保護者が30分単位で回答。同研究では、米国National Sleep Foundation が1歳児の推奨睡眠時間を1日11~14時間としていることに基づき、11時間未満を睡眠不足と定義している。

魚摂取量およびn-3 PUFAの1日あたりの摂取量に応じて参加者を5つのグループに分類し、睡眠時間が11時間未満となる割合を調査。その結果、魚およびn-3 PUFAの摂取量が一番少ないグループに比べ、より多く魚およびn-3 PUFAを摂取している全てのグループにおいて、生まれた子どもの1歳時点の睡眠時間が11時間未満となる割合は少なくなった。

今回、妊婦が魚やn-3 PUFAを十分に摂取することで、生まれた子どもの1歳時点の睡眠不足を減らす可能性が示された。この結果は、妊婦が魚、特にn-3 PUFAを多く摂取すると、新生児の中枢神経系発達や睡眠状態が良好になるという、これまでの他研究結果とよく一致する。

血中濃度を含めたさらなる研究が望まれる

今回の研究結果は、妊婦が十分な魚を摂取することが、胎児の中枢神経系の発達に有効であり、生まれた子どもの1歳時点の睡眠不足を予防する可能性を示唆している。しかし今回の調査・研究では、妊娠中の魚およびn-3 PUFAの摂取量および生まれた子どもの1歳時点の睡眠時間について、母親が記憶に基づき回答した自己記入式の質問票で調べている。また、妊婦の健康意識が妊娠中の食事パターンや生まれた子どものケアの双方に影響する可能性があるにも関わらず、妊婦の健康意識については調べていない。さらに、今回、n-3 PUFA全体の摂取量は調べたが、個々の脂肪酸データ(EPA・DPA・DHAなど)は調べていないため、血中濃度を含めたさらなる研究が望まれる。

以上のような調査・研究を進めることにより、胎児の中枢神経系が発達する妊娠中期にどのくらいの量の魚を食べると、生まれた子どもの1歳時点の良好な睡眠に結び付くか、具体的に明らかになることが期待される。

妊婦にn-3 PUFAの摂取を推奨することは、従来の妊婦に対する栄養指導を早期から、より丁寧に継続することで可能だ。なお、n-3 PUFAがたくさん含まれるイワシ、サンマ、アジなどの小型の青魚は、食物連鎖でメチル水銀などの有害物質が濃縮されることはまれであり、妊娠中において摂取量を特に注意する必要はない、と研究グループは述べている。

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