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医療的ケア児でモデル事業-専門薬学管理の薬局増加へ

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2021年11月01日 AM10:15


■多職種連携の研修会実施

医療的ケア児の専門的な薬学管理に対応した地域の薬局を増やすため、2021年度から10都府県の薬剤師会でモデル事業がスタートした。沖縄県薬剤師会は医療的ケア児の療養を支援するための多職種連携シートを策定するほか、東京都薬剤師会は世田谷区にある国立成育医療研究センターと連携し、薬剤師向けのオンライン研修会を開催する。入院から在宅に移行した医療的ケア児に対する医療提供体制の重要性が高まる中、地域在宅医療で関わりが少ない薬局でも小児医療の専門職種との連携を通じてより良いケアにつなげる。

2018年12月に成育医療基本法が制定され、2021年2月には「成育医療の提供に関する施策を総合的に推進していくための基本方針」が閣議決定された。基本方針には、薬剤師が医師や保健師、看護師などと共に国や地方自治体が講じる成育医療等の提供に関する施策に協力する必要があると明記されている。

小児患者を多く診察する専門医療機関からは、医療的ケア児に対する薬局薬剤師の取り組みが不十分と認識されており、入院から在宅へと移行する場合に対応可能な薬局を紹介できていない実態がある。小児医療を実践するための多職種連携が大きな課題だ。

厚生労働省は今年度の予算で「成育医療分野における薬物療法等にかかる連携体制構築推進事業」を実施。10都府県の薬剤師会が採択事業者に選ばれた。

沖縄県薬は、医療的ケア児の療養を積極的に支援することを目的とした多職種連携シートを策定する計画だ。沖縄県は人口当たりの医療的ケア児数、人工呼吸児数が全国でも上位3県に入るが、小児在宅医療を常時応需可能な薬局は会員登録をしている薬局547店舗中38店舗にとどまり、必要な薬剤師サービスを受けられていなかった。

そこで、地域の薬局が医療的ケア児の薬物治療を含めた療養生活を支援するため、入退院時に病院の相談支援専門員との連絡や薬学的に注意が必要な際の訪問看護師との連絡、担当保健師との療養支援の定期連絡などに用いる多専門職種との情報連携シートを作成することを決めた。

既に先月から医療的ケア児の専門職連携会議や、医療的ケア児に関わる医療福祉制度に関する「薬剤師研修シラバス」に基づいた薬剤師研修会を開始。今月からは協力が得られた他専門職種や薬局で「連携シート」を用いたトライアルを1カ月間実施する予定だ。トライアルの結果を踏まえ来年3月までに連携シートを完成させ、地域薬剤師会で実践していく。

都薬は、世田谷区の成育医療研究センターと連携し、薬剤師向けのオンライン研修会を開催する。医療的ケア児の治療に関わる医師が講演し、看護師やソーシャルワーカー、病院薬剤師などとの多職種連携のケア体制のあり方を考えていく。小児在宅医療を経験していない薬局が多いことから、薬剤師への啓発が最重要活動と位置づける。

福井県薬は、越前市をモデル地域に医療的ケア児の多職種連携のあり方を考える研修会を開催する。12月に第1回、1月か2月に第2回を行う予定だ。今回のモデル事業を“おうちへ帰ろうプロジェクト”と銘打って、薬剤師が小児在宅医療に参画し、子供の早期退院につなげる。

広島県薬は、成育医療に関する新たな委員会を立ち上げ、薬剤師向けの研修会を開催する。また、県内で医療的ケア児に対応している薬局数や、個々の薬局における具体的な取り組みを把握するため実態調査も行う。医療的ケア児に対応可能な薬局リストを取りまとめ、医療機関や訪問看護などと共有し、地域での医療連携体制構築を支援していく。

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