高齢期に「ごみ屋敷」になる住環境以外の要因は?
東京都健康長寿医療センター研究所は10月28日、東京都市部のディオゲネス症候群(いわゆるごみ屋敷症候群)の臨床的特徴と長期予後を明らかにしたと発表した。この研究は、同研究所福祉と生活ケア研究チームの井藤佳恵氏らの研究グループによるもの。研究成果は、「International Journal of Geriatric Psychiatry」に掲載されている。
研究グループは2011年以来継続して、東京都の都市部で暮らす高齢者困難事例の研究を行ってきた。高齢者困難事例が抱える困難事象は複雑だが、そのなかで、いわゆるごみ屋敷は視覚的にとらえやすく、社会からの注目も高い困難事象である。
ごみ屋敷についての医学的論文が最初に発表されたのは1966年。以降、現在まで主に西洋の都市部からの研究報告が続いている。しかし、どういう人の住まいが、なぜ、高齢期になってから「ごみ屋敷」になってしまうのか、そのメカニズムはいまだわかっていない。そこで研究グループは、これまでに蓄積したデータから、いわゆるごみ屋敷症候群(ディオゲネス症候群)の臨床的特徴と長期予後を明らかにすることを試みた。
独居・認知症進行・身体機能の衰えあり、適切な支援がない高齢者はディオゲネス症候群になる可能性がある
高齢者困難事例270人を対象に、Environmental Cleanliness and Clutter Scaleを用いて住環境を評価。ディオゲネス症候群60人と非ディオゲネス症候群210人の2群に分けて比較した。
その結果、独居高齢者の認知症が進行し、身体機能が衰えたとき、適切な支援がなければ、誰もがディオゲネス症候群になる可能性があることが明らかになった。さらに、彼らの生命予後が不良であることは先行研究でも指摘されていたが、とりわけ介入から1年以内の死亡率が高いことが明らかになった。
「ディオゲネス症候群に対する支援はもっぱら住環境に焦点があてられる傾向にある。しかし、今回の研究から、彼らは身体的健康のリスクも高く、身体的健康に早期から十分に配慮した支援方針を考える必要があるということがわかった」と、研究グループは述べている。
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・東京都健康長寿医療センター研究所 プレスリリース