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胃粘膜で産生のTFF2に胆管がんの発生を抑制する作用、モデルマウスで確認-名大

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2021年10月28日 AM11:45

胆管がんの発がんメカニズムは不明、診断後の平均生存期間は2年未満

名古屋大学は10月15日、胃粘膜で産生されるタンパク質であるTFF2に胆管がんの発生を抑制する作用があることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科腫瘍外科学の江畑智希教授、山口淳平病院講師、長谷部圭史大学院生らの研究グループによるもの。研究成果は、「Carcinogenesis」にオンライン速報版に掲載されている。


画像はリリースより

胆管がんは2番目に多い肝原発悪性腫瘍であり、世界的にがん関連死亡の原因の約3%を占めている。その予後は不良であり、診断後の平均生存期間は2年未満とされている。転移がなく手術で切除し得た胆管がんでも、5年生存率は20~40%にとどまっており、また抗がん剤による化学療法の効果も限定的だ。

胆管がん発生の原因とされる疾患として、原発性硬化性胆管炎、肝硬変、膵胆管合流異常症などが挙げられるが、これらによる慢性的な炎症により遺伝子異常が生じることによって胆管がんが発生するものと考えられている。胆管がんに代表的な遺伝子異常としてはがん抑制遺伝子であるPTEN遺伝子の異常が指摘されているが、その原因はいまだ明らかではない。胆管がんの発がんメカニズムを解明し、ひいては新たな胆管がん治療薬の開発が求められている。

TFF2産生胆管がんでPTENが活性化、TFF2欠損マウスでBilINが多発

研究では、はじめに培養した胆管がん細胞を用いてTFF2 (Trefoil Factor Family 2)の効果を検討した。TFFは、主に消化管の粘膜に発現する細胞外分泌型タンパク質。TFF1、、TFF3の3つのサブタイプがあり、胃潰瘍や炎症性腸疾患などで傷ついた粘膜を修復する作用があるとされているが、最近ではがんの発生を抑制する作用があることが示唆されていた。

検討の結果、TFF2を産生する胆管がん細胞は増殖が遅く、多くの細胞死(アポトーシス)を起こし、がん細胞の浸潤能力も劣ることが明らかになった。さらに、TFF2産生胆管がんではPTENが活性化されることも明らかとなり、これがTFF2による腫瘍抑制効果の本体である可能性を見出した。

次に、マウスの肝臓にKRASと呼ばれるがん遺伝子の変異を組み込んで、さらにTFF2遺伝子を欠損したマウスを作製して検討した。結果、TFF2欠損マウスでは肝臓に近い(肝門部の)胆管にBilINと呼ばれる前がん病変が多発した。さらに検討を重ねると、TFF2欠損マウスの一部では肝臓に胆管がんが発生することが判明した。これらの結果は、TFF2が胆管がんの発生を抑制する作用を持つことを示しているという。

胆管がんに対する治療は外科的切除が唯一の根治的治療法であるが、発見された時点で転移が見つかって切除できないことも多いのが現状だ。そのような場合、抗がん剤による化学療法が行われるが、その効果は芳しいものではない。研究グループは、「TFF2の抗がん作用を利用することで新たな胆管がん治療法を開発することを目標とし、研究を重ねていく」と、述べている。

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