Jones骨折に対するハーバートスクリューを用いた髄内固定術の手術成績は不明だった
兵庫医科大学は10月26日、アスリートの第5中足骨疲労骨折(Jones骨折)に対するハーバートスクリューを用いた髄内固定術の有効性を初めて明らかにしたと発表した。この研究は、同大病院整形外科の森本将太助教らの研究グループによるもの。研究成果は、「The American Journal of Sports Medicine」に掲載されている。
Jones骨折の治療において、合併症の予防・早期競技復帰の観点から手術療法が推奨されており、スクリューを用いた髄内固定術が最も標準的とされている。同術式は一般的に非常に良好な成績であることが報告されているが、不適切なスクリューの使用により、遷延癒合・偽関節・再骨折などの合併症が発生することがあると報告されている。
一方、ハーバートスクリューは特徴的なデザインを有するスクリューであり、さまざまな骨折の治療に使用され、その良好な治療成績が報告されている。しかし、Jones骨折に対するハーバートスクリューを用いた髄内固定術の手術成績に関するまとまった報告は存在しない。さらに、Jones骨折に対するスクリューを用いた髄内固定術において、第5中足骨の髄腔は弯曲しているため、スクリュー挿入時に骨折部が開大することがある。一般的に、骨折部の開大は骨折部の治癒過程において好ましくない現象だ。しかし、スクリューを用いた髄内固定術における骨折部の開大が手術成績に及ぼす影響について調査した報告はない。
術後2年以上の経過観察が可能だった37例を対象に、手術成績を後ろ向きに検討
研究グループは今回、2005年8月~2017年8月に同大病院で、Jones骨折に対しハーバートスクリューを用いて髄内固定術を行ったアスリートのうち、術後2年以上の経過観察が可能だった37例を対象とし、手術成績を後ろ向きに検討した。手術成績として、骨癒合までの期間、競技復帰までの期間、合併症を調査した。
また、スクリュー挿入に伴う骨折部の開大の影響を調査するため、対象を骨折部の開大があった群(Gap群)、なかった群(No-Gap群)の2群に分け、手術成績を比較検討した。さらに、骨折部の開大量と骨癒合までの期間、競技復帰までの期間の相関関係を調査した。
骨癒合・競技復帰までの期間、他のスクリューを使用した髄内固定術と統計学的有意差なし
研究では、全例において遷延癒合・偽関節・再骨折などの合併症なく骨癒合が得られ、競技復帰した。骨癒合までの期間は平均10.1週、競技復帰までの期間は平均10.9週であり、他のスクリューを使用し髄内固定術を行った過去の研究結果と比較し遜色のない結果だったという。また、Gap群とNo-Gap群の間で、骨癒合までの期間、競技復帰までの期間に統計学的有意差はなかった。さらに、骨折部の開大量と骨癒合までの期間、競技復帰までの期間に相関関係はなかったとしている。
これらの結果から、ハーバートスクリューを用いた髄内固定術はJones骨折に有用であることが明らかとなった。また、同術式における骨折部の開大が手術成績に影響を与えないことも明らかになった。
Jones骨折をしたアスリートが、より安全に早期競技復帰できる可能性
今回の研究成果により、ハーバートスクリューを用いた髄内固定術がJones骨折に有用であることが明らかにされた。一方で、同研究は後ろ向き研究であり、他のスクリューを用いた髄内固定術の手術成績と比較しておらず、この点はまだ課題が残る。
「同術式が普及すれば、Jones骨折したアスリートが、より安全に早期競技復帰できる可能性がある」と、研究グループは述べている。
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