新型コロナウイルスワクチンの臨床試験は、プラセボを対照に発症予防効果を評価するデザインとなるが、新型コロナウイルスワクチンの接種が進み、新たにプラセボ対照臨床試験を実施することが難しくなっている。検証的臨床試験で既承認ワクチンを対照とした評価のあり方を考案する必要が生じる中、PMDAは臨床的エンドポイントの評価が実現不可能な場合に、免疫原性に基づいて有効性評価を行う際に留意すべき事項について考え方を示した。
検証的臨床試験で実対照群の選択については、原則として被験薬がmRNAワクチンであればmRNAワクチン、組み換えウイルスワクチンであれば組み換えウイルスワクチンを選択するなど、同種の素材や作用機序で免疫原性のプロファイルが類似しており、発症予防効果が示されている既承認のワクチンを選択する必要があるとした。
被験薬がアジュバントを使用した製剤の場合は、アジュバントの違いが免疫原性に与える影響にも留意した上で対照薬を選択することが望ましいとし、接種回数が同じで同一の接種間隔を採用できるものを優先して検討するよう求めた。
ただ、同じ作用機序のワクチンが未承認で入手困難である場合は、被験薬と実対照薬の間で免疫原性のプロファイルが類似していることなど対照薬としての適切性を説明できれば、異なるモダリティのワクチンを選択することも可能とした。
対照薬に比べ有効性が劣っていないことを証明する非劣性試験で評価を行う場合は、新型コロナウイルスワクチンとして必要な有効性が示されることを保証する観点から、発症予防効果が60%以上となるものを対照薬として選択することが適切であるとした。
有効性の主要評価項目に免疫原性の指標を用いる際には、被験薬と実対照薬の開発の際に起源として用いたそれぞれの新型コロナウイルス株に対するGMTを設定すべきと明記し、長期有効性として1年間の追跡調査も求めた。ワクチン接種前と接種後で中和抗体価が4倍以上に増加した被験者の割合についても対照薬との非劣性を検証する必要性を示した。
被験者数は3000例を確保し、被験薬群と実対照薬群の割合は3対1程度までを目安とした。また、複数の被験薬を一つの共通した治験実施計画書下で評価するプラットフォーム試験による有効性評価を行うことも可能との見解を示した。