Runx2がコントロールする遺伝子を網羅的に探索
大阪大学は10月19日、Smoc1とSmoc2遺伝子が骨および軟骨の形成に重要な遺伝子であることを発見したと発表した。この研究は、同大大学院歯学研究科の高畑佳史助教、西村理行教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Communications Biology」にオンライン掲載されている。
画像はリリースより
ヒトおよびマウスの遺伝学的研究により、転写因子Runx2が骨と骨芽細胞の形成と軟骨の成熟に必須的役割を果たしていることが明らかにされている。生化学的な研究により、Runx2がコントロールする遺伝子が見つかっているが、これら遺伝子と骨の形成や軟骨の成熟との関係は不明だった。Runx2は、変形性関節症などの軟骨・関節疾患の病因の一つとしても注目されている。今回、研究グループは、最新の遺伝子工学技術を駆使して、Runx2がコントロールする遺伝子を網羅的に探索し、その役割を解明して、骨と軟骨を形成するメカニズムの解明に迫ることを目的として研究を行った。
RNA-seqで発見、ダブルノックアウトマウスで重要性を確認
研究グループは、遺伝子発現を網羅的にスクリーニングするRNA-seqという解析手法を用いて、Runx2でコントロールされる遺伝子として、Smoc1およびSmoc2を発見した。Smoc1のノックアウトマウスおよびSmoc2のノックアウトマウスを作製し解析した結果、各々の骨あるいは軟骨の形成への影響は軽微だった。一方、Smoc1とSmoc2の双方を欠失するダブルノックアウトマウスを作製したところ、同マウスでは、全身の骨格が小さく、頭蓋骨が欠失し、顎骨の形成が損なわれていた。さらに、骨を造る骨芽細胞のSmoc1とSmoc2遺伝子を抑制すると、骨芽細胞が骨組織を造る機能が損なわれていた。
今回の研究成果は、骨の形成と軟骨の成熟に関与する重要な遺伝子を発見し、骨や軟骨の形成のメカニズムの理解に大きく貢献すると見込まれるもの。同研究の成果を基盤として、骨粗しょう症、関節リウマチ、変形性関節症などの骨および軟骨疾患の新規治療法の開発に寄与することも期待される。研究グループは、さらに鎖骨頭蓋異形成症などの遺伝性骨疾患の病態解明や診断にも貢献したい意向を示している。
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・大阪大学 ResOU