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室内光レベルに応答する超高感度光受容タンパク質を開発、ラットで効果を確認-岩手大

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2021年10月19日 AM10:45

過去に開発した光受容タンパク質「」を基に、光感度に関わるアミノ酸を予測

岩手大学は10月14日、2014年に開発した光受容タンパク質「mVChR1」の立体構造を基に、コンピューターシミュレーションで光感度に関わるアミノ酸を予測し、新たに光に対する感度の高い光受容タンパク質「」を創出することに成功したと発表した。この研究は、同大理工学部化学・生命理工学科生命コースの冨田浩史教授、菅野江里子准教授、博士課程3年の渡邊義人氏らの研究グループによるもの。研究成果は、「npj Regenerative Medicine」に掲載されている。


画像はリリースより

外界からの情報の80%以上は眼を通して得られ、視覚は日常生活で重要な役割を担っている。しかし、一旦失明に至ってしまうと、現状では視覚を回復させる治療法はない。中途失明を来す疾患の上位に位置する網膜色素変性症では、網膜で最初に光を受容する視細胞が選択的に障害され、失明に至る。

研究グループはこれまでに、視細胞変性により引き起こされる失明に対して、光受容タンパク質を網膜で発現させることで視覚を回復できることを報告してきた。2014年には、緑藻類ボルボックス由来の光受容タンパク質mVChR1を開発し、遺伝子治療によって視覚機能を取り戻す研究を行っている。これまでに開発した光受容タンパク質では、光感度不足から、非常に明るい場所での視覚回復に限定されていた。また、海外で臨床試験が進められている同様の遺伝子においても、治療後も裸眼で見ることはできず、映像を高輝度で提示する特殊デバイスが必要とされている。

盲目ラットの網膜にComV1遺伝子を導入した結果、赤~青の光の感知が可能に

今回研究グループは、2014年に開発した光受容タンパク質(mVChR1)の立体構造を基に、コンピューターシミュレーションにより光受容タンパク質の光感度に関わるアミノ酸部位を予測することで、より光感度の高い新しい光受容タンパク質のデザインを行った。これにより、新たな光受容タンパク質ComV1を見出した。

ComV1をコードする遺伝子を合成し、培養細胞を用いて光感受性を調べたところ、0.04µW/mm2(mVChR1は1µW/mm2)の光刺激にも応答することがわかり、20倍以上の低照度(暗さ)でも応答するこれまでにない高感度光受容タンパク質であることが判明した。また、失明に至ったラットの網膜にComV1遺伝子を導入し、ComV1タンパク質を作らせることにより、盲目のラットが青~赤(可視光)の光を感知できるようになり、電気生理学的、行動学的に視覚の回復が確認された。

ComV1を用いることで室内光レベルでも裸眼で有用な視機能が得られる可能性

今回創出に成功した高感度光受容タンパク質ComV1を用いることで、高輝度で映像を提示する特殊なデバイス等を利用することなく、室内光レベルでも裸眼で有用な視機能が得られると予想される。

「一般に市販されているウェアラブル機器・スマートグラスなどの映像提示デバイスと継続的な研究開発を行っている独自の色信号制御・ソフトウェア技術(JIG-SAW株式会社との共同研究)との融合により、極めて高いレベルの新たな視覚再建治療となる可能性がある」と、研究グループは述べている。

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