厚労省は部会の意見を踏まえ、都道府県向けに事務連絡を発出した。製造販売業者から心筋炎関連事象疑いとして報告された事例は3日現在、ファイザー製ワクチンが160例、モデルナ製ワクチンが93例の報告がある。特に10、20代男性の報告頻度が多かった。
国内の新型コロナウイルス感染症に伴う心筋炎等の発症頻度は100万人当たり834人であるのに対し、10、20代男性におけるmRNAワクチン接種後に報告された心筋炎等疑いの発症頻度は100万人当たり28人以下と低い。そのため部会では、「ワクチン接種によるベネフィットがリスクを上回ると評価でき、全年代においてワクチンの接種体制に影響を与える重大な懸念は認められない」と結論づけた。
10代、20代の男性については、ファイザー製が100万人接種当たり3.69、9.62であるのに対し、モデルナ製は28.83、25.62とワクチン間の被接種者属性が異なるものの、ワクチン接種後の心筋炎関連事象が疑われる報告頻度が明らかに高いことから、厚労省はファイザー製ワクチンの接種を推奨することを提案。
これに対し委員からはファイザー製ワクチン接種を推奨するとの強い表現にすると、国民がどのメーカーのワクチンを受けたいか選択できなくなる懸念から、リスクベネフィットについて十分な情報提供の上、「ファイザー製ワクチンの接種も選択することができるとする」と修正した。
濱田篤郎委員(東京医科大学病院渡航者医療センター特任教授)は、「全体的に心筋炎を起こしても軽症で済んでいる。心筋炎が起こる機序は明らかになっておらず、ファイザー製であっても心筋炎を起こす。ファイザー製ワクチン接種を推奨すると言うよりも、mRNAワクチンを使う場合に心筋炎を注意喚起するほうが重要ではないか」と述べた。
倉根一郎委員(国立感染症研究所名誉所員)は、「モデルナ製がファイザー製よりも劣るというイメージが作られないようにしないといけない」と問題提起した。
佐藤薫委員(国立医薬品食品衛生研究所薬理部第一室長)は「モデルナ製ワクチンを打って2回目を待っている人もいる。ファイザー製を推奨と書かれるとモデルナ製そのままというのは選択しづらい」と述べた。