NMOSD、抗アクアポリン4抗体陽性の患者が7~8割
中外製薬株式会社は10月14日、同社が創製したpH依存的結合性ヒト化抗IL-6レセプターモノクローナル抗体「エンスプリング」(一般名:サトラリズマブ(遺伝子組換え))について、希少な中枢神経系疾患である視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD:neuromyelitis optica spectrum disorder)を対象に実施した第3相臨床試験の新たな長期有効性と安全性のデータを発表した。試験データは、第37回欧州多発性硬化症学会(ECTRIMS)で発表された。
NMOSDは、視神経と脊髄の炎症性病変を特徴とする中枢神経系の自己免疫疾患であり、永続的な神経障害により、生涯にわたって著しい生活の質の低下が生じる。NMOSDの患者は、症状を繰り返す再発経過をたどることが多く、神経の損傷や障害が蓄積される。症状として、視覚障害、運動機能障害や生活の質の低下を伴う疼痛などが現れる。症状の発生が致死的な結果となる場合もある。
NMOSD患者の70~80%で、病原性の抗体である抗アクアポリン4抗体が検出されており、抗アクアポリン4抗体はアストロサイトと呼ばれる中枢神経に存在する細胞を標的とし、視神経や脊髄、脳の炎症性脱髄病変につながることが知られている。炎症性サイトカインであるIL-6は、NMOSDの発症に重要な役割を果たしていることが明らかになりつつある。
中央値4年間の投与、7割以上が3.7年後も無再発を維持
エンスプリングは、同社が創製した、pH依存的結合性ヒト化抗IL-6レセプターモノクローナル抗体で、同社独自のリサイクリング抗体技術を適用した初めての薬剤である。視神経脊髄炎スペクトラム障害の主な原因であるサイトカインのIL-6のシグナルを阻害することで、NMOSDの再発の抑制が期待される。視神経脊髄炎(NMO:Neuromyelitis Optica)およびNMOSD患者を対象とした2つの第3相国際共同治験において、免疫抑制剤によるベースライン治療との併用投与および単剤投与でそれぞれ主要評価項目を達成した。これらの2試験は希少疾患であるNMOSDに対して行われた最も大規模な臨床試験の1つ。エンスプリングはこれまでに日本、米国、欧州、カナダを含む58か国で承認されている。
ピボタルな第3相臨床試験であるSAkuraStar試験およびSAkuraSky試験の中央値4年間の投与データでは、エンスプリングを投与したAQP4-IgG陽性のNMOSD患者のうち、各試験でそれぞれ73%と71%が投与192週(3.7年)後も無再発を維持し、90%と91%が重度再発のない状態を維持していた。エンスプリングの単剤投与および免疫抑制剤との併用投与のいずれの試験においても、二重盲検期間に認められた有効性は、より長期間維持されることが示された。
また、安全性について、上記2試験の二重盲検期間で確認された安全性プロファイルが、最長7年間の投与期間においても同様に確認された。有害事象および重篤な有害事象について、全投与期間中のエンスプリング投与群の発現率は、二重盲検期間中のエンスプリング投与群とプラセボ投与群と同様だった。かつ、新たな安全性シグナルは認められなかった。
ロシュ、さらなる研究が必要なNMOSD患者を対象にSAkuraBONSAI試験を開始
ロシュ社は、さらなる研究が必要なNMOSD患者を対象に、画像診断、バイオマーカーおよび臨床評価を用いて疾患活動性および進行を評価するため、多施設共同国際共同第3b相臨床試験であるSAkuraBONSAI試験を開始する。AQP4-IgG陽性のNMOSD患者で、未治療例またはリツキシマブ(またはバイオシミラー)治療に対する効果不十分例に対し、エンスプリングを2年間単剤投与し、核磁気共鳴画像法(MRI:magnetic resonance imaging)、光干渉断層撮影法(OCT:optical coherence tomography)等の臨床的測定法、血液および脳脊髄液のバイオマーカーを用いて評価する。
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