APOE4アレルをもつパーキンソン病患者で認知機能低下マーカーを探索
京都大学は10月14日、APOE4アレルをもつパーキンソン病患者においてのみ、診断時の血中のリンパ球の減少がその後の経時的な認知機能の低下を的確に予測することを発見したと発表した。この研究は、同大医学研究科博士課程の月田和人氏(兼・帝京大学先端統合研究機構特任研究員、関西電力医学研究所睡眠医学研究部特任研究員)、同博士課程の酒巻春日氏、高橋良輔教授らの研究グループが、国際多施設共同観察研究のデータを用いて行ったもの。研究成果は、「Movement Disorders」にオンライン掲載されている。
画像はリリースより
パーキンソン病では、個々の患者によって経過がかなり異なることが知られている。そのため、患者の層別化を行い、治療介入を行っていく必要性が提唱されている。認知機能低下の起こりやすさには、日本人の約10%に認められる、アルツハイマー病発症の遺伝的な危険因子である「APOE4アレル」をもつか否かが重要であることはわかっているが、APOE4アレルをもつパーキンソン病患者が必ず認知機能の低下を起こすわけではない。
そこで今回、研究グループは、国際多施設共同研究であるPPMI(Parkinson’s Progression Markers Initiative)研究のデータを用いて、APOE4アレルをもつパーキンソン病患者において認知機能低下を予測するマーカーを探索した。
診断時の血中リンパ球減少がその後の経時的な認知機能低下を的確に予測
その結果、診断時の血中リンパ球数の低下が、APOE4アレルをもつ患者において、以後の認知機能低下を的確に予測することを発見した。興味深いことに、診断時の血中リンパ球数の低下はAPOE4アレルをもたない患者においては、以後の認知機能低下と全く関連がなかった。
血中リンパ球数は、パーキンソン病において、おそらく脳内の炎症を反映して低下することが以前より報告されている。今回の研究において、世界で初めてこの現象が認知機能の予測に有用であることが見出された。さらに、この予測能はAPOE4アレルをもつ患者に限られるということは、「APOE4アレル」と「脳内炎症」は相補的に認知機能低下を引き起こすと考えられる。「今回の知見は、パーキンソン病における認知機能低下の発現機構に重要な示唆を与えるものと思われ、また、パーキンソン病における認知機能低下の先制治療にも光明を与えるものと期待される」と、研究グループは述べている。
▼関連リンク
・京都大学 最新の研究成果を知る