家庭内不和などによりスマホ依存になるケースも
東京医科歯科大学は10月12日、同大の「ネット依存外来」の患者を対象に「スマホ依存」の改善に向けた特定臨床研究を開始したことを発表した。この研究は、同大、KDDI株式会社、株式会社KDDI総合研究所との共同研究で実施される。
画像はリリースより
「スマホ依存」とは、疾病ではないが、スマートフォンの過剰な利用により、体力低下、成績が著しく下がるなど、普段の日常生活に支障をきたしているにも関わらず、使用がやめられず、スマートフォンを使用していないと、イライラし落ち着きがなくなってしまう状態のことを指す。
KDDIとKDDI総合研究所が以前に実施したアンケート調査では、約4人に1人(約25%)がスマートフォンの長時間利用に問題を感じており、その中の約83%が「スマートフォンの利用を改善したい」と回答していた。また、同調査では、全体の約74%が、睡眠時間の減少、視力の低下、生活習慣の乱れなどの悪影響があると回答していた。
「スマホ依存」は、発達障害、学校などでのストレス、家庭内不和などにより引き起こされることがある。家庭内不和は、親の過剰な干渉、親子間のコミュニケーション不足による信頼感の喪失、保護者の育児ネグレクトなどが原因で、現状は具体的な薬による処方の術がなく、家族支援プログラムといった介入が主な対処となっている。
親子間のコミュニケーションを促進させるための専用アプリによる介入
KDDI、KDDI総合研究所、同大の3者は、2020年8月25日に共同研究契約を締結し、東京医科歯科大学のネット依存外来の患者に対する実態調査を通じて、「スマホ依存」の調査と解明を進めてきた。ネット依存外来の患者は中高生の子どもが多いことから、親子間のコミュニケーションを促進し関係を改善することで、スマートフォン依存軽減の度合いを検証する研究を実施する。
研究では、KDDIとKDDI総合研究所が提供するスマートフォンアプリ「みまもるZO」を活用する。同アプリは、患者(子ども)用、保護者用の2つで構成され、家族ぐるみで適切な対処法を工夫することで症状や問題行動の解決を図る家族療法に基づき、子どものスマートフォン利用状況に応じて保護者用のアプリに適切なタイミングで子どもとのコミュニケーションの取り方を助言するなど、親子間のポジティブなコミュニケーションを促進させるための介入を行う。アプリの有効性および安全性、および、アプリにより患者のスマートフォンによるインターネット使用関連行動の改善が評価される。
KDDIグループ、医療現場での利用を想定し2024年度以降の実用化を目指す
3者は、共同研究を通じて、誰もが適切にスマートフォンを利用できる安心で豊かなデジタル社会の実現を目指す。また、KDDIグループは、同特定臨床研究や脳神経科学とAIを活用したスマートフォン依存の改善・予防に関する共同研究の結果などをもとに、医療現場での利用を想定したスマートフォンアプリの2024年度以降の実用化を目指している。
▼関連リンク
・東京医科歯科大学 プレスリリース