DGKα阻害剤治療効果、抗PD-L1抗体との併用治療による抗腫瘍効果を検討
北海道大学は10月12日、肝がん治療モデルマウスを用いてジアシルグリセロールキナーゼ(DGK)α阻害が肝がんの増殖を抑える効果のメカニズムを解明し、さらに免疫チェックポイント阻害剤との併用により相乗的な抗腫瘍効果が得られることを発見したと発表した。この研究は、同大大学院医学研究院の武冨紹信教授、遺伝子病制御研究所の北村秀光准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Cancer Immunology Immunotherapy」に掲載されている。
画像はリリースより
日本における肝がんによる死者は年間2万5,000人を超え、化学療法や手術法の進歩により改善されてきてはいるが、依然として生存率は低い状況であり、新たな治療法の開発が望まれる。近年、がん患者における免疫抑制状態を改善する免疫チェックポイント阻害治療薬がさまざまながんに治療効果が見られているが、治療対象は限定的で効果は十分ではない。
これまでに、肝がん患者においてDGKαの発現が予後不良因子であること、DGKα阻害が肝がん細胞の増殖を抑制することがわかってきた。そこで今回の研究では、生体内におけるDGKα阻害による抗腫瘍効果及びメカニズムを明らかにするとともに、免疫チェックポイント阻害剤との併用治療の可能性を探求した。
今回の研究では、肝がん細胞へDGKα阻害剤を投与し、増殖抑制効果を確認した。また、免疫細胞へDGKα阻害剤を投与し、免疫賦活効果を確認。さらに、マウス肝がん細胞を肝臓へ生着させるマウスモデルを構築し、DGKα阻害剤の治療効果およびメカニズムの検討を行い、抗PD-L1抗体との併用治療による抗腫瘍効果を検討した。
免疫チェックポイント阻害剤併用による相乗的な抗腫瘍効果を確認、マウスで
研究の結果、DGKα阻害により肝がん細胞の増殖は抑制され、担がんマウスモデルにおいても肝がんの縮小および生存率の延長が確認された。また、DGKα阻害によりインターロイキン(IL)2、インターフェロン(IFN)γの産生増加を介して宿主免疫細胞が活性化し腫瘍免疫が増強することを明らかにした。
また、IFN-γの刺激により肝がん細胞における免疫抑制分子PD-L1の発現が上昇することから、担がんマウスモデルにおいてDGKα阻害と抗PD-L1抗体を用いた免疫チェックポイント阻害治療の併用を検討。相乗的な抗腫瘍効果を確認した。
今回の研究により、肝がんに対するDGKα阻害剤による新規治療薬の開発の可能性だけではなく、がん細胞の免疫抑制をブロックする免疫チェックポイント阻害剤治療との併用により相乗的な効果を示すことから、肝がん治療における有望な治療戦略が示唆された。より多くの肝がん患者の救済につながると考えている、と研究グループは述べている。
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